ネットワーク関連技術のイベント「Interop Tokyo 2012」で6月14日、Juniper Networksでプラットフォームシステム部門最高技術責任者(CTO)を務めるMichael Beesley氏が登壇。「ネットワーク・イノベーション 〜SDNはネットワークとアプリケーションの溝を埋められるか?〜」と題して講演した。
Beesley氏は、SDN(Software Defined Networking)がネットワーク業界に対してどのようなイノベーションを起こしているのか、同社はSDNをどのように考えて製品に実装しているのか、SDNが進展することでユーザーにとってどのようなメリットが得られるのかなどを解説した。
SDNでネットワークの進化を加速させる
マイケル・ビーズリー氏
Beesley氏はまず、Juniper NetworksがOpenFlowの標準化団体であるOpen Networking Foundationのアクティブメンバーであることや、SDNの研究開発団体であるONRCの設立メンバーであることなどに触れながら、SDNとOpenFlowに2年ほど前から積極的に取り組んできたことを説明。「取り組みを進めるなかで、これらが業界にとっても、業界のエコシステムにとっても、大きなチャンス、価値をもたらす技術だと自信を深めている。SDNやOpenFlowは、従来のレガシーネットワークが抱える課題の一部を解決できる」と強調した。
同氏によると、レガシーシステムのインフラストラクチャーは、非常に複雑で、閉鎖的で、不安定だという。例えば、ユーザーがマルチベンダー戦略をとろうとしても、機器の相互接続性の確認や投資コストの検証に膨大な時間がかかったり、サービスプロバイダーがOSS/BSSを統合する場合に大掛かりなシステム統合が必要になったりと、イノベーションのために時間とコストがかかってしまっている。一方で、ネットワーク機器を提供するベンダー側でも、そのような柔軟性に乏しい市場に対して、新しい製品を投入しにくくなっている。
「アプリケーションはセルフサービスアプリやSaaSへ、ストレージは専用ストレージから仮想化ストレージへ、サーバは専用サーバから仮想サーバへと進化し、柔軟でダイナミックな管理が可能になった。静的で硬直化したレガシーネットワークでは現在のエンタープライズ環境のニーズを満たせなくなっている。例えば、ビジネスのスピードに俊敏に対応できない。BYOD(Bring Your Own Device)などの新しいトレンドへの対応も難しい。ITの進化の歴史を振り返ると、ネットワークだけが進化から遅れている」(Beesley氏)
業界でのSDNへの取り組みは、ネットワークの進化を加速させ、自動化による運用コスト(OPEX)の削減や仮想化による初期投資(CAPEX)の削減につなげていこうというものだ。同社では2009年にこうした自動化、仮想化を具体化する構想として「New Network」を立ち上げており、「方向性はSDNと同じもの」だという。