SDNがユーザーにもらたすベネフィットとは
Beesley氏はそのうえで、SDNを実現するための技術としてOpenFlowの現状を解説。現在はバージョン1.1で、「OpenFlowコントローラー」や「OpenFlowスイッチ」、この間のプロトコルである「OpenFlowプロトコル」などの策定が完了している段階だ(図2329.jpgの1〜3に相当)。
将来的には、コントローラーがビジネスプロセスやワークフローとやりとりができるようになること(図2の4)、さらにその上のアプリケーションのレイヤーにおいて、ビジネスプロセスとアプリケーションをAPI(WebサービスAPI)レベルで連携してさせていくことが検討されているという(図2の5)。
これをネットワークとアプリケーションの2つのレイヤーで見ると、次の図のようになる。
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「(レガシーな)ネットワークは、アプリケーションと相互にやりとりせず、単に反応するだけになっている。ステータスのチェックもせず、バックアップもしない。ネットワークの場所や遅延、品質をアプリケーションに知らせることもできない。それに対して、SDNではネットワークとアプリケーションの関係がより強固になる。コントローラーがネットワークとアプリケーションとのやりとりを調整するメディエーションレイヤとして機能し、ネットワークとアプリケーションとがリアルタイムにフィードバックするようになる」(Beesley氏)
具体的なプロトコル(ネットワークAPI)としては、リアルタイムでトポロジーを把握する「ALTO」「BGP-TE」、最適な経路でトラフィックをコントロールする「PCE」などがあると説明。「これらはオープンである必要があり、相互運用性の検証が必要」(同氏)だが、こうした技術を製品に実装していくことで、ネットワークにまつわるコスト削減、全体最適へとつながるという。
もっとも、こうした技術的な話は、クラウドの基盤技術の話と同様、サービスを利用する多くのIT部門にとっては直接的な影響はほとんどないと言える。同氏は、実際にSDNが企業のIT部門にとってどのようなベネフィットがあるかについては、SDNが今後どのような領域に適用されていくかというユースケースから解説を加えた。
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まず、活用範囲が大きいものとして「クラウド・コンピューティングのサポート」がある。これは、例えば、サービスプロバイダーなどがデータセンター内にSDNを築くことで、ユーザーに対し適切なSLAを提供することだ。データセンター内のネットワークの効率を把握することで、全体のコストを最適化するもので、サービス品質、コスト面でのメリットにつながる。
また、「コンテンツ・サービスのルーティング」「コンテンツのプリポジショニング・キャッシュ」「データセンター間の負荷分散」は、それぞれ、ユーザーが距離的にどのデータセンターを利用すればコストを抑えられるか、どのコンテンツをキャッシュとして利用すればよりスピーディーにコンテンツを利用できるようになるか、複数のデータセンターでの負荷を考慮して効率的に利用するにはどうすればいいかといった課題につながるものだ。
そのほかにも、ユーザー企業が自社内にプライベートクラウドを作り、さらに社外のデータセンターをハイブリッドクラウドとしてシームレスに連携させる「クラウド・ブラスト」、SDNにおけるネットワーク情報の把握を使って、「DDoSアタックを検知、防止」することを説明した。
Beesley氏は最後に、こうした領域のほとんどをカバーする製品を持つことがジュニパーの強みであり、また、同社が創業以来“破壊的テクノロジー”を積極的に採用してきた企業であることをアピール。「標準化やAPI開発、ユースケースの検証など、エコシステム全体でSDN、OpenFlowに取り組んでいくことが重要だ」と話した。
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