Explicit(形式知)とは、直接的に入手可能な情報であり、いわば世の中から収集される大量のデータのことを指す。そして、ここから導き出される表面的には見えないデータをImplicit(暗黙知)と位置づける。
「自動車の位置情報とワイパーの動作情報を収集するのはExplicit(形式知)。そして、ワイパーの使用有無や動作速度と自動車の位置情報をもとに、どこでどのぐらいの雨が降っているのか、時間とともに雨雲がどう動いているのかがわかるというのがImplicit(暗黙知)。多くの情報から、まったく違う価値を生んでくる。これがビッグデータの面白さである」と語り、「複雑な情報構造のなかから真の情報価値を導き出し、本質的な課題に辿り着くことが重要である。効率化は世界中にとって『第二の資源』ともいえるもので、ICTシステムが新たな価値を創出し、世界的な課題の解決に寄与することになる」と述べた。
NECは分析技術で暗黙知を導き出し、それによって人口増大や資源枯渇といった世界的な課題の解決にも貢献するという点を、遠藤社長は強調してみせた。
その一方で、遠藤社長はビッグデータ時代の課題を興味深い視点から訴えた。
それは形式知の入口となるセンサーやカメラ、スマートデバイスにおけるセキュリティである。
遠藤社長は「情報の収集における最終的な問題は、セキュリティにあると考えている」とし、「たとえば改ざんされた大量のデータが流れると、それをもとにインフラが誤った判断を行い、社会に大きな影響を及ぼすことになる」と指摘する。
誤った形式知の収集は、誤った暗黙知を導き出すことにもつながり、それが社会を混乱させることにもつながるというわけだ。
そこでNECは、軽量暗号モジュールを開発。これを各種センサーなどに搭載することで、データの盗聴、改ざんなどの危険性を防止できるなどと説明した。
もうひとつの訴求ポイントがSDNである。
遠藤社長は「ソフトウェアによる制御を通じて、データや情報に応じてリアルタイムにダイナミックな処理と伝送を可能にすることができる。データセンターに一度蓄積した情報を取り出すのではなく、必要とする利用者に対して、鮮度を保ったまま、リアルタイムに情報をフィードバックする。さらに、NECは総務省と共同で災害時において音声通話とメールを優先するフレキシブルで可用性の高いネットワークの構築にも取り組んでいる」などとした。
SDNに関しては、展示会場でもOpenFlow対応製品の「Programmable Flow」を展示しており、来場者の関心を集めていた。
ネットワーク仮想化を実現するProgrammable Flowは、すでにNECのデータセンターのなかで活用されている。その結果、仮想化により消費電力を80%削減し、ソフトウェアでの対応によりネットワーク構成変更費用は0に、障害発生時の切り替え時間も98%削減できるという。
ITベンダーのなかでも、ネットワークに優位性を持つのがNEC。SDNによって、ビッグデータ時代でもその強みが発揮できることを強調してみせたといえよう。
もうひとつ特筆しておきたいことがある。
それは、遠藤社長の基調講演で「Sometime in the near future」と呼ぶビデオを放映したことだ。約6分間に渡るこのビデオでは、C&C Cloudによって実現する近未来の様子をみせる内容となっている。
安全性に配慮しながら最適な交通ルートを選択する自動車のナビゲーションシステム、リアルタイムデータと仮想現実技術を組み合わせた教育分野への活用、製造現場と小売店を結んだ対話型サプライチェーンシステムの実現や、小売店におけるICTを活用した効果的な接客環境、顔認証技術を活用したセキュリティシステムなどが紹介された。
NECがこうした近未来の姿をビデオで見せるのは、これまでにはあまり例がなかった。
遠藤社長は、「私はこのビデオを見るのは2回目。1回目よりもよく理解できた。みなさんも何度か見てもらいたい」と冗談交じりに語ったが、こうしたビデオによってNECが目指すべき方向性を多くの人に伝えることも大切な取り組みだろう。
その点でも、NECの顧客に対する姿勢が少し変化しはじめていると感じることができた。
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