コーヒーを飲んでもらうその先の狙い--キヤノンとスターバックスのプロジェクト「道のカフェ」を追う(中編)

大河原克行 2012年11月14日 19時55分

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 2011年7月から被災地での「道のカフェ」プロジェクトを続けているキヤノン、スターバックス、松下政経塾。第1回の「写真の力で被災地に笑顔を呼び戻す」では、プロジェクト発足の背景をレポートした。今回は道のカフェの狙いを探ってみよう。(ZDNet Japan編集部)

スターバックスらしさ、キヤノンらしさ

 「コーヒーをゆっくりと飲んでもらおう」というのが「道のカフェ」プロジェクトの基本的なスタンスであるが、それはむしろ表面的なものであり、スターバックスにはそれ以上の思い入れがある。

 その理由をスターバックス コーヒー ジャパンのマーケティング・カテゴリー本部に所属する酒井恵美子氏は次のように説明する。

 「スターバックスはコーヒーを提供する企業ではなく、コーヒーを楽しんでもらう空間そのものを提供することを目指している。道のカフェでも、単にコーヒーを味わってもらうだけではなく、被災者同士が会話ができ、地域コミュニティの再生を目指すという狙いも込めた」

 沿岸部で津波の被害にあった被災者は仮設住宅での生活を余儀なくされ、知らない人同士が隣あわせで生活をするという状況に置かれていた。これまでのコミュニティが壊れ、新たなつながりを求められていた時期でもあった。

 震災から約3カ月を経て、被災者にとってはそろそろ「くつろぎの時間」が欲しいタイミングでもあったのもかもしれない。

 もちろん、スターバックスでは義捐金などの形で被災地を支援していた。だが、もしかしたら道のカフェこそがスターバックスらしい支援の形なのかもしれない——。

 「コーヒーを通じてお互いに会話してもらう場を提供したい」

 これはスターバックスの企業姿勢がそのまま形になった提案だったともいえよう。

 キヤノンはこの提案に「写真」という形で貢献することにした。

 つながりは、先の被災地への視察研修で一緒になったスターバックスの巌真氏と、キヤノンのインクジェット事業本部管理センター部長の中山勉氏の接点だった。

 キヤノンも義捐金や医療機器の提供などの積極的な支援活動を行ってきた。今回の写真での貢献は「デジタルフォト文化の創造と発展」に取り組んできたキヤノンにとって、企業姿勢をそのまま具現化するものであった。カメラメーカーであり、プリンタメーカーであるキヤノンならではの貢献ともいえる。

 「震災や津波で大切な思い出の写真を無くしてしまった人が多い。写真を撮って、新たな思い出を作ってもらいたいと考えた」と、中山部長は語る。

 現場での撮影には、フォトジャーナリストの渋谷敦志氏、佐藤慧氏、安田菜津紀氏の3人が協力した。プロのカメラマンに撮影してもらうケースはなかなかない。そして、キヤノンからはプリントアウト役として3人の社員がプリンタの前に張り付く。

 「出来上がった写真は笑顔ばかり。そして、それを受け取る人の顔もにこやか。その表情をみるたびに、こちらも笑顔になる」と、プリントアウト役を買ってでているキヤノン インクジェット事業本部インクジェット事業統括センターの吉永裕司担当部長は語る。

 「おおっ、生きていたのか」

 道のカフェの一角でそんな声があがった。

 「久しぶりだなぁ。元気だったか」と明るい声があがる。

 震災後、離ればなれになり、音信不通だった友人が、道のカフェで偶然再会を果たしたのだった。

 2011年7月23日と24日の2日間、岩手県陸前高田市の米崎中学校と高田第一中学校の仮設住宅で最初の「道のカフェ」が開かれた。

 開催時間は、初日が約2時間、2日目が約4時間と短いものであったが、2日間で約800人が参加。1650杯のコーヒーが振る舞われ、400枚の写真がプリントアウトされた。

 運営は3社を中心としたプロジェクトチームによって行われた。しかし、地域の被災者にも積極的に企画や運営に参加してもらうようにしている点が特徴だ。開催前には、地域の住民が積極的に周囲に参加を呼びかけ、カフェ当日の設営から運営も共同で行う格好とした。

 終了後には、新たなアイデアを共有しながら次の設計を一緒に考え、中長期的なプロセスを通じ、地域内外での絆を深めることで、地域コミュニティ再生の道につなげるという。

 2011年秋には「シーズン2」として宮城県気仙沼市のゲストハウスアーバンと岩手県陸前高田市の米崎中学校仮設住宅で、また2011年冬には「シーズン3」として同じく米崎小学校仮設住宅で道のカフェを開催した。

 スターバックスでは、移動式店舗車輛のスターバックス号を活用。毎回約20人のスタッフが参加する。東北沿岸部の被災地には、もともとスターバックスは出店していない。そのため、ボランティアで参加するスタッフはすべて被災地以外からの参加となる。なかには東北地区の店舗だけでなく、都内や大阪、福岡、広島などの店舗から参加するスタッフもいるという。

 「初めて一緒に仕事をするスタッフ同士のはずなのに、一糸乱れぬ様子で作業が進む。全国でオペレーションが徹底されていることにびっくりする」(吉永部長)と、現場では意外な驚きの場面もあったという。

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