矢野経済研究所は11月27日、国内企業を対象にしたITガバナンスの実施状況の調査結果を発表した。海外のグループ企業をITガバナンスを対象にしている企業は約3割にとどまるという。
ITガバナンスの対象範囲を聞くと、グループ企業をITガバナンスの対象としている企業は31.9%。グループ企業を対象とせずに自社だけでITガバナンスを実施している企業は46.8%、特にITガバナンスを意識していない企業が15.0%となっている。
グループ企業をITガバナンスの対象としている企業の中で、海外のグループ企業だけを対象としている企業は6.8%、国内と海外の両方を対象としている企業は24.3%。合計すると海外を対象とする企業は31.1%となっている。残りの68.9%は国内だけを対象にしている。
今回の調査対象企業のうち、国内に子会社がある企業は323社、海外に子会社がある企業は173社。2011年度の売上高別に、それらの企業のITガバナンス実施率を算出した。
海外に子会社がある企業で、海外をITガバナンスの対象にしている比率を売上高規模別にみると、年商1000億円以上の企業が最高で75.0%だった。年商50億から100億円未満の企業では14.3%、年商500億から1000億円未満の企業でも31.6%と、海外をITガバナンスの対象にしている比率は3割程度以下にとどまっている。
国内に子会社がある企業で、国内をITガバナンスの対象にしている比率は、年商50億円未満の企業を除けば5割程度になり、国内と海外でITガバナンスへの対応差が大きいことが分かる。
年商1000億円以上の企業では、国内が77.4%、海外が75.0%と、どちらも割合が高い上に国内と海外の差がほとんど存在しない。年商1000億円以上の大手企業では、グローバルでのITガバナンスが整備されていることがうかがえるとしている。
矢野経済研究所では、ITガバナンスの目的として、セキュリティや災害対策などのリスク管理と、売り上げや在庫などのデータを収集し、経営判断に役立てる情報活用という2つの側面があると指摘。ITガバナンスは企業統治そのものと密接に結び付いていると説明する。
多くの企業で海外グループ企業をITガバナンスの対象としていないという事態は、「情報漏洩やセキュリティ事故が起きる」「海外での生産や販売の業績管理を効率的に行えない」といった問題が起きる可能性が高いと指摘している。
加えて、中堅中小企業も海外事業を積極的に進めているが、現地法人の経営層に一任するなど属人的な体制になりやすいと警告する。ITの活用レベルが低く、手作業や個人のノウハウに頼る傾向も強いと説明。ITガバナンスは企業規模を問わず取り組みべき課題だが、中堅中小企業のグローバルITガバナンスの実現が急務であると提唱している。
調査は、7~10月に企業のほか公的機関などの法人554社を対象に、郵送アンケート形式で実施した。