マイクロソフト、企業ITのソーシャル化に照準

三浦優子

2012-12-05 20:10

 日本マイクロソフトは12月5日、エンタープライズソーシャル戦略に関するプレス説明会を実施。「人を中心に置くと、全てのアプリケーションがソーシャル化する」という見方を示し、次期OfficeについてはSNSとの統合が重要な要素となるとした。

日本マイクロソフトの執行役マーケティング&オペレーションズのマイケル・ビール ゼネラルマネージャー
日本マイクロソフトの執行役マーケティング&オペレーションズのマイケル・ビール ゼネラルマネージャー

 マイクロソフトのエンタープライズソーシャル戦略について、日本マイクロソフトの執行役マーケティング&オペレーションズのマイケル・ビール ゼネラルマネージャーは、「9月以降、新たな時代を拓く3大製品としてWindows Server 2012、Windows 8をリリースし、さらに次期Officeのリリースを予定している。次期Officeは多様なデバイスへの対応、クラウド対応の強化、管理機能の強化などとともにSNSとの統合や多拠点間オンラインHD会議などソーシャル対応強化を行う」と今後の新しいOfficeにソーシャルが重要な意味を持つと強調した。

 さらに、日本マイクロソフト業務執行役員 Officeビジネス本部のロアン・カン本部長は「ソーシャルというのはITに限ったものではない。技術がなかった時代には近所、職場と人間関係の範囲が限られていた。今、テクノロジーの進化により世界中の人とつながり、付き合えるようになった。人とのつながりを中心に置くと、全てのアプリがソーシャル化することになる」と指摘。全てのアプリにソーシャルの要素が加わる可能性を示唆した。

 ただし、企業内でソーシャルを活用する際に「ソーシャル用の特別なアプリケーションを利用するのではなく、ツールはあくまでも日常的に使っているものであるべきだろう。また企業でソーシャル化されたアプリケーションを利用する場合、セキュリティを担保する必要がある」(カン本部長)とし、注意すべき課題もあると指摘した。

 その上で「我々はセキュリティを担保した、日常的に利用しているツールにソーシャル要素を組み込むことができる」とマイクロソフトの強みを強調した。

マイクロソフトのソーシャルに関するビジョン
マイクロソフトのソーシャルに関するビジョン

 エンタープライズソーシャル導入の価値としては、従業員のエンゲージメント、チームコラボレーション、ビジネスの俊敏性、顧客への対応という4点で導入メリットがあるという。

 従業員のエンゲージメントの実例としてトヨタ自動車を例に挙げる。「トヨタには異常を発見したスタッフが誰でも生産ラインを止められるアンドンと呼ぶスイッチがある。そのIT版といえるのがエンタープライズソーシャルだ。誰でも社内の情報に対してフィードバックを返し、それを他の社員も共有できる。調査によればエンゲージメントの高い従業員を持つ会社は18%生産性が高く、12%収益性が高いという結果が出ている」(カン本部長)と説明した。

 チームコラボレーションの例としては、社内で起こっている問題解決の答えを持っているのが誰なのかわからない場合でも「ソーシャルを活用することで専門家を探すことができる。国をまたがってその答えを知っている専門家を探す場合など、ソーシャルは大きな武器になる。調査ではソーシャル導入によるチームコラボレーションで20%から25%の生産性向上を実現した」(カン本部長)と効果を強調した。

 ビジネスの俊敏性では、以前は迅速な情報共有が難しかった小売の競合店との差別化につながるディスプレイのノウハウが、ソーシャル化によって俊敏な情報共有を実現し、「調査では64%が組織活性化に成功したとの結果を得ている」(カン本部長)。

 顧客への対応としては、マイクロソフト自身の例をあげ「日本のユーザーは世界的に素早く製品に反応する傾向がある。ソーシャルを活用することで我々はお客様の反応を受け素早くフィードバックを行う体制をとるようになった。業務時間の6割から8割が例外処理に費やされているというが、ソーシャルツール活用により顧客が考えていることを知ることもできる。結果的に、例外処理にかかる時間を減らせる」(カン本部長)と説明した。

 具体的な製品としては、SharePointと、買収した企業向けソーシャルサービスの「Yammer」の「Yammer」との統合デモを紹介した。SharePointとYammerは現在は基本的な連携が実現した段階で、今後はより深い連携を目指す。将来は統合エクスペリエンスを実現するロードマップとなっている。具体的な時期、詳細なロードマップは2013年以降に発表される予定だ。

 現段階では、YammerのライセンスをStandard、Enterpriseの2種類に統合し、ライセンス価格も15ドルから3ドルと大幅に価格を下げた。2013年3月1日以降はEAユーザー向けにSharePoint OnlineおよびOffice 365 E1-4との統合プランを追加コストなしで提供開始することも予定している。

 また「2013年第1四半期にはiOS、Android版も含めたSharePointMobileアプリの提供も開始する予定」(カン本部長)という。

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