過剰なアウトソーシングは、最終的に米国企業にとって脅威となるのだろうか?
レーガン政権下で財務次官補を務めたPaul Craig Roberts氏のような未来予測に長けた人たちは、この質問に「その通り」と答えるはずだ。Roberts氏はアウトソーシングのことを「会社が手にしている偽の金塊」と評している。同氏は、「報酬が四半期の業績と結び付いていることに起因する、米国の実業界における目先重視の思考により、国内の企業は最高の従業員という人的資産を失うだけでなく、製品を購入してくれるコンシューマーをも失ってしまう結果を招いている。外国人労働者に置き換えられて失業、または低賃金労働に従事する人々は、コンシューマー市場でのプレゼンスも失っている」と述べている。
インソーシングに目を向けているすべての企業が、必ずしもRoberts氏と同じ論理展開でアウトソーシングを評価しているわけではない。とは言うものの、インソーシングを進める企業の多くがより懸念しているのは、社内における知的資産の風化だ。また、海外の特許法では拘束力が弱い、あるいは法律自体が存在しないために、革新的な製品やアイデアを保護できないのではないかという懸念もある。こういった懸念が現実のものとなった場合、自ら投資してさんざん研究開発したところで、アイデアを盗みブランドを付け替えて販売した会社に市場を奪われることになる。
こういったシナリオでは、ITが高いリスクをもたらす可能性がある。なぜなら、企業によるイノベーション(製品だけにとどまらず、市場のスピードに追随することや、コストを削減しながら収益を拡大すること)のかなり多くの部分は、技術革新によるものだからだ。多くの企業が業務戦略を練るうえで翻弄されているのは、この部分である。彼らはインソーシングという選択肢を、IT労働力という商品を低コストで調達するという選択肢と比較することになるわけだ。また、製造のスピードや品質、そして市場投入までの期間といった重要な項目も検討対象となっている。
こういった議論は2013年に入っても続くだろう。しかし、多くのケースにおいて、アウトソーシングとインソーシングの「混在」が続く一方、多くの企業はここ数年にわたるアウトソーシングが過剰であり、社内の知的資産の長期的な健全性を害するようになっているという結論に達するはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。