データセンターの移設は、複雑な業務だ。移設作業のための支出を許可する経営陣への説明に苦労することがあるし、移設に伴う業務上のリスクを理解し、管理しなければならない。この記事では、データセンターの移設に伴う複雑な点やリスクをいくつか見ていく。
サービスの可用性
データセンターの第一の目的は、事業に役立つアプリケーションをホストすることだ。あるデータセンターから別のデータセンターへの移設を考える場合には必ず、最初に基礎となるサービスの可用性を検討しなければならない。こうしたサービスには、「Active Directory」のようなインフラストラクチャアプリケーションや、SAPのようなクライアント対応アプリケーションが含まれる。
サービスをデータセンター間で移行させるにあたり、特定のサービスをいつ移動するかという問題や、あるいはアプリケーション間の相互依存性を計算に入れた戦略を立てなければならない。サービス可用性への一般的な対処方法は、移行用のグループを作って、相互依存しているアプリケーションを共通のグループに入れることだ。
Active Directoryや「DNS」のような、エンタープライズアプリケーションの大半をサポートしているサービスの場合は、こうしたコアサービスを、両方のデータセンターを横断して拡張するのが一般的な方法だ。そのサービスは、移行が完了するまで両方のデータセンターに残ることになる。
ハードウェアの移設
物理サーバの移設には2通りの戦略がある。1つは、「リフトアンドシフト」と呼ばれる方法で、もう1つはデータ複製である。「リフトアンドシフト」戦略では、ハードウェアを引っ越しトラックに乗せて運び、新しいデータセンターに設置する。システムは移動前にバックアップしておくが、この戦略にはリスクが伴う。
最大のリスクの1つが、輸送中に物理的ハードウェアが損傷することだ。輸送中の損傷は、バックアップを無効にしてしまう可能性がある。もう1つの問題は、データセンター間の物理的な距離によっては、この選択肢が使えず、許容できる時間内にサービスを再開できない可能性もあることだ。
2つ目の戦略は、専用回線を使ってデータを移行する方法である。専用回線には、2つのハードウェア移行の選択肢がある。1つ目の選択肢は、「物理(physical)サーバから物理サーバへ」(P2P)の移行を行うことだ。P2P移行では、ダウンタイムを最小限にしつつ、アプリケーションとハードウェアの両方を移行可能な、同種のハードウェアを確保することになる。