一部の米国企業は、かつて社内で行っていたもののアウトソーシングした仕事を、再び社内で行う(インソーシングする)ようになってきている。こういった決断の背景には何があるのだろうか?
米国におけるソフトウェア開発技術者の年収は平均9万4000ドルだが、インドでは1万4000ドル、フィリピンでは7521ドルとなっている(引用元:http://jobs.aol.com/articles/2012/07/09/gm-vows-to-insource-most-of-its-it-jobs-beginning-of-a-trend/)。また、クラウドベースの進捗管理ソフトウェアが利用可能になったことで、企業はオフショアで働いている契約作業員の作業状況を綿密に管理できるようになるとともに、プロジェクトやITサポートのための文字通り「時差という制約を越えた」リソースを活用できるようになる。これらすべてを考え合わせると、米国企業にとってオフショアITは極めて魅力的な選択肢だ。
しかしまったく逆の方向、すなわちインソーシングに向かった、あるいは向かおうとしている米国企業も存在している。
General Motors(GM)もその1つだ。2012年、同社は3年以内にIT部門の業務の90%をインソーシングするという計画を発表した。その目的には、内部要員による生産性の高さや、出張の削減、マネジメント負荷の低減、文化的な整合性を追求するといったものがある。そして、最も重要なこととして、新製品に向けたイノベーションのための技術的な専門性を直接駆使する能力と、高い企業収益を生み出すうえで必要となる市場への即応性の獲得も挙げることができる。また、今やほとんどの業界において決定的な武器となっている技術的専門性によって、企業は高い競争力を手にするという点も忘れることはできない。
こういった企業はGMだけではない。Ford MotorやStarbucks、Caterpillar、Google、General Electric(GE)といった企業はすべて、インソーシングに踏み切ったり、インソーシングに向けた取り組みを進めている。これらの企業はその目的として、製品のより迅速な市場への投入や、輸送費や倉庫保管費用の低減、製品やサービスの品質向上、手戻りの削減、知的所有権の保護強化、経済不況下で苦しんでいる米国人に向けて「エールを送る企業」という企業イメージの創出を挙げている。
しかし、インソーシングに向けて取り組んでいる大企業とともに働くIT業界のあるコンサルタントは、「大企業がITのインソーシングを検討する主な理由は、アウトソーシングによって社内のITスキルが低下していき、自社の技術的資産の維持やイノベーションのための技術的『手段』を失ってしまうことへの恐怖心からくるものだ」と打ち明けている。