ベンチマーク対象を海外企業に変えた日立

冨田秀継 (編集部)

2012-12-20 15:58


日立 情報・通信システムグループ長の岩田眞二郎氏
日立 情報・通信システムグループ長の岩田眞二郎氏

 日立製作所は12月20日、情報・通信システム事業の2012年の取り組みを説明する記者会見を開催した。

 会見に登壇した岩田眞二郎氏(日立製作所 執行役専務で、同社 情報・通信システムグループ長 兼 情報・通信システム社 社長)は、現在注力する「高信頼クラウド事業」と「ビッグデータ利活用事業」、そして社会インフラ分野でのIT活用を目指す「スマート情報事業」だけでは売り上げおよび利益の両面で不足があるとの認識を示し、システム構築(SI)に関する事業にも引き続き力を入れることを強調した。

 一方、「長いスパンで見ると、システム構築の“量”は減っていくだろう」とも述べている。クラウドコンピューティングの登場により、企業のIT製品・サービスの調達意識が変化しているが、問題はその速度がどれくらいの期間、どれくらいの早さで進むかだ。岩田氏は「最短から最長まで考え、それぞれのレンジで打つべき手を議論している」と語っている。

さらなる変革に挑む

 日立は3月に投資家向けの説明資料「Hitachi Smart Transformation Project」(PDF)を公開しており、その中で売り上げ原価、販管費、研究開発費、営業利益/税前利益を、国内競合企業ではなく、海外企業と比較。ベンチマーク対象をグローバル競合企業とすることを鮮明にしてみせた。

 この中で日立は、産業・交通・都市開発システムと情報・通信システム、電力システム、そして日立の材料およびキーデバイスを掛け合わせた事業となる「社会イノベーション事業」のグローバル化にあたって、三つの課題があったと説明。

 その課題を、(1)国内リソース依存の高コスト体質、(2)多事業・大組織・個社最適の持つ非効率性・リソースの重複、(3)過度の自前主義と整理していた。その解決のために発足したのが同プロジェクトと言える。

 情報・通信システム社でも事情は同じで、岩田氏は、SIからサービスへの移行は「スマートトランスフォーメーションの重要な課題だ」と強調した。今後、システムエンジニアをサービス要員へと移行させていくことが重要になるため、2011年度からその取り組みを始めたと説明している。

 また、さらに課題(2)の「多事業・大組織・個社最適の持つ非効率性・リソースの重複」については、これまで「ひとつひとつの(グループ)会社が、すべて自前でやっていることが非常に多かった。クラウドに近いサービスメニューを情報・通信システムグループの各社が持っている」と問題点を指摘。グループ各社が国内競合を起こしていた状況にあったとした。

 岩田氏は「昨年、それをすべて整理した」と述べ、「整理が第一歩。第二歩は(重複する事業やリソースなどを)まとめていく」とコメント。ただし、どのサービスを、どのようにまとめるか、まとめたサービスを主管する事業体はどこかまでは言明しなかった。

 日立では、サービス体系の整理だけでなく、組織にまで踏み込んで改革を進めている。従来、グループ会社の営業は自社サービスの売上に責任を持っており、いわば自社への貢献が評価などの基準となっていた。岩田氏は「(グループ)各社の受注金額ではなく、連結会計でやる」と述べており、グループ会社の人員であっても、グループ全体への貢献度を見ていく考えを示している。この取り組みは今年度下期から始めており、来年度には制度面も含めて本格化させていく意向だ。

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