続・働かない「働きアリ」--「怠け者」と「バカ者」は必要か - (page 2)

飯田哲夫 (電通国際情報サービス) 2013年01月15日 12時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

短期戦略と中長期戦略

 さて、アリの社会を振り返ってみると、短期的には非合理であることが、中長期的には合理的であることが分かる。つまり、皆で一斉に働いた方が仕事は早く片付くのであるが、それでは想定外の仕事量になったときに対応することが出来なくなる。また、全員が同じ行動を取らないと大きな餌を運ぶことはできないのだが、そこには新しい発見を望むことが出来ない。

 つまり、短期的には非効率であることも、中長期的な組織戦略から考えると、それを許容するだけの価値が十分あるということである。「働きアリ」のキャリアパスで見たように、アリ社会は冷酷だ。そのアリ社会において許容される「怠け者」と「バカ者」に価値が無ければ、既にその存在は抹殺されているであろう。

会社における「怠け者」と「バカ者」

 では、会社組織においても「怠け者」と「バカ者」を許容すべきか。その答えは、アリと同じ意味においてはノーである。どういうことか。

 アリの脳は小さい。故に、その労働量のコントロールのために、より効率的なルートを発見するために、アリは遺伝的に「怠け者」と「バカ者」を作り出したのである。

 人間はアリよりも賢い。故に、会社としてなにも遺伝的な「怠け者」や「バカ者」を一生懸命採用することはない。もっと意図的に「怠け者」的な社員、「バカ者」的な社員を育成するべきなのだ。

 アリ社会が遺伝的に実現しようとしたのは、組織における多様性なのである。アリは、脳が小さいが故に、その多様性は「反応閾値」や突飛な行動として表現された。

 会社組織においては、反応閾値の異なる社員を揃える必要はない。つまり、アリ社会が求めるものと同じ多様性を求める必要はなく、それを遺伝子に求める必要もない。

 組織として必要となる多様性が何かを定義して、それに見合った人材の採用や育成を行うべきなのだ。そして、アリとは異なる環境に生きる我々が必要とする多様性は、全く異なるものである。それは、時代によっても、場所によっても、組織によっても変わってくるものなのだ。

 それにしても、「働きアリ」、何とも悲しい響きである。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SpecialPR

連載

CIO
“真FinTech” 地域金融の行方
教育IT“本格始動”
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
スペシャル
デジタル時代を支える顧客接点改革
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
エンタープライズトレンドの読み方
10の事情
座談会@ZDNet
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]