日本IBMは1月24日、2013年のクラウド事業の重点領域を「Product」「Process」「People」の3つの「P」とする方針を明らかにした。
「Product」では、企業の基幹業務利用に適した水準のクラウドサービスの提供を開始するとともに、パートナーとの協業によるポートフォリオの拡充、業種別ソリューションの展開を進める。「Process」では、業務改革計画からインフラ実装までの幅広いクラウド関連サービスの提供、新たなアプリケーション開発手法に対応した仕組みを提案する。また、「People」では最適な提案、導入、サポートを行う全社体制の構築と、専任営業体制の強化に取り組むとした。
熊本義信氏
日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業 スマーター・クラウド事業部長の熊本義信理事は、「日本IBMは今後、企業のエンタープライズ層に対して、クラウドを推進していくための支援を行うことを重要なメッセージとして伝えていくことになる」と前置きし、「IBMの製品は面白いが、どんな風に適用すればいいのか、ベンダーとして利用促進に対してどう支援してくれるのかといった声が聞かれている。ITを最適化して企業の競争力にどうつなげるかといったことにまで踏み込んだ提案していくことに力を注いでいく」とした。
日本IBMでは、プライベートクラウド、マネージドプライベートクラウド、ホステッドプライベートクラウド、シェアードクラウドサービス、パブリッククラウドサービスといった幅広いクラウドコンピューティングモデルとレイヤーを提供している強みを生かすとともに、シェアードクラウドサービスとプライベートクラウドとを組み合わせたハイブリッドクラウドサービスの提案を可能としていること、基幹向けアプリケーションをサポートできることが、日本IBMのクラウドサービスの特徴だとした。
また、既存のアプリケーションをクラウドで稼働させ、コスト削減を目指す「Cloud Enabled」モデルと、新たな事業への展開を目指してクラウドの特性に対応したアプリケーションを開発する「Cloud Centric」モデルを提案。「Cloud Enabledによる『ITの再生』と、Cloud Centricによる『ビジネスの創生』の2つの観点をバランスよく提案していくことが必要である」とした。
さらに、社内の人材を有機的に活用する姿勢を示し、システム&テクノロジーグループ、ソフトウェア・グループ、グローバル・テクノロジー・サービス、グローバル・ビジネス・サービスという同社の主要4グループの体制を横断した取り組みを加速。「スマーター・クラウド事業部が、複数のコンポーネントから構成される案件を担当。今年は部門横断的な活動が重視されると考えており、これを全社の重点施策として取り組んでいく」とした。
日本IBMでは、企業向けクラウドプラットフォーム「IBM Smarter Cloud Enterprise(SCE)」および、ゲスト仮想マシンのサービス管理やセキュリティなどの機能を加えた「IBM Smarter Cloud Enterprise+(SCE+)」において、幅広い顧客の業務に対応したサービスメニューやサポート強化などを発表。IBM Smarter Cloud Enterprise R2.2およびIBM Smarter Cloud Enterprise+ R1.1として提供を開始する。
SCEは99.9%のSLAを実現し、2011年から提供を開始しているクラウドサービスで「10円クラウド」と呼ばれているもの。SCE R2.2は、業種や規模を問わずに幅広いユーザーでの利用を狙って、Windows関連機能を強化。大容量のメモリを必要とするアプリケーションを安定して運用できるよう、従来の2倍となる32GBのメモリを搭載するメニューを新たに追加した。「今後四半期ごとに機能を拡張していくことになる」という。
また、SCE+ R1.1は、データベースへのバックアップ管理における機能拡張を行うなど、ミドルウェアに対するマネージドサービスを強化し、企業のシステムに要求される信頼性の高い運用や、既存環境からの容易な移行を支援する。
さらに同社では、SAPアプリケーションを用いた企業の業務システムをPaaS形式のクウラドサービスとして提供する「IBM Smarter Cloud for SAP Applications R1.1」(SC4SAP)を開発。2月18日から提供を開始する。
クラウドの特性を生かし、短期間で初期コストを抑えた最適なコストでの構築と運用を実現する統合基盤となり、クラウド環境とサービス管理、セキュリティ機能には、SCE+を活用。高い可用性と業務継続性を実現しているという。標準化されたBASIS運用サービスや自動プロビジョニングを実現。IBM自身が世界最大級のSAPユーザーであり、「すでに用意されたベストプラクティスの活用により、最大50%のトータルコストの削減が可能になるほか、自動プロビジョニングとサービスの標準化により、運用品質の向上と作業時間の大幅な短縮も可能になる」などとした。
また、熊本氏は「ユーザーが企業の基幹システムをクラウドに移管する際に、自前でやる部分と外出しでやる部分はどこにするかといった最適な運用を実現するためのサービスを横方向に用意している。また、IaaSとPaaSに加えて、今後SaaSを提供し、縦方向に品揃えを強化していく」とした。
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