松岡功の「今週の明言」

今週の明言--日本IBM社長が事業戦略を熱弁

松岡功

2012-09-21 13:00


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今週は、日本IBMのマーティン・イェッター 代表取締役社長と、独SAPが今年6月に買収した米Sycloのジェフ・クレバン エグゼクティブバイスプレジデントの発言を紹介する。

「IBMが日本の顧客企業から求められているのは、チャンピオンリーグで戦えるようにしてほしいということだ」
(日本IBM マーティン・イェッター 代表取締役社長)

 日本IBMが9月11日、都内ホテルでIBMの事業戦略説明会を開いた。イェッター氏の発言は、その記者会見で、日本の顧客企業から共通して出てきた同社への要望を語ったものである。

 今年5月に日本IBMの社長に就任したイェッター氏は日本のIT市場について、「米国に次ぐ世界第2位の市場で、IBMにとっては非常に重要だ」とし、ドイツ、フランス、中国を合わせた市場規模があると指摘。そして、今後は中堅・中小企業を対象とした営業展開を強化するとし、そのために関西(大阪)、中部(名古屋)、九州(福岡)、東北(仙台)に地域を統括する営業拠点を新設したことを説明した。

 ただ、質疑応答では、中堅・中小企業および地方を重視した事業展開が本当に日本IBMの業績向上につながるのか、という疑問の声が複数の記者から上がった。それに対し、イェッター氏は「首都圏以外の地域を合わせると、フランス一国に相当する市場規模がある。しかも、地方の中堅・中小企業にはグローバル化の意欲が強い企業が少なくない。そうしたニーズに対応することで、ビジネスを拡大していきたい」と答えた。

 さらにイェッター氏は、「IBMのグローバルなエコシステムを活用し、顧客企業の国内における活動だけでなく、グローバルな活動での成功も支援できる体制がわれわれにはある。日本IBMが長年培ってきたローカルの強みと、170カ国40万人の社員によるグローバルな知見を組み合わせて、最適なソリューションを提供していきたい」と、日本IBMならではの事業展開に自信を覗かせた。

 冒頭の発言は、こうした説明のあと、イェッター氏が同社の社長に就任してから多くの顧客企業のトップと面談してきた中で、共通して出てきた要望だという。ちなみに「チャンピオンリーグで戦える」という表現は、「世界の舞台でトップ集団として戦える」という意味合いだろう。IBMにその支援をしてほしいという顧客企業の声は、まさしくIBMのブランド力そのものといえる。

 この記者会見には、米IBMから4人のシニアバイスプレジデントも登壇し、それぞれ担当する事業の説明を行った。最初に挨拶を兼ねて説明に立ったイェッター氏の持ち時間は、予定では5分しかなかったが、結果的に20分を超えてしまい、あとが押したのはご愛敬か。その熱弁ぶりが印象に残った会見だった。

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