東京以外のITニーズに対応するのが重要だ——。
日本IBMが7月に大規模な組織再編を実施した。この再編は競合企業やパートナー、顧客に驚きを与え、その詳細に注目が集まっていた。
5月に同社社長に就任したマーティン・イェッター(Martin Jetter)氏は、冒頭の発言で日本IBMが自ら変革しようとしていることを示したといえる。
同社が9月11日に開催した事業戦略説明会には、イェッター社長のほか、米本社からシニアバイスプレジデント級の幹部が参加。イェッター社長自ら、日本IBMの変革の取り組みを説明した。
特にポイントとなるのは、中堅中小企業(SMB)市場の攻略を明言したことだ。
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SMB攻略については、米IBMでSales and Distribution担当SVPを務めるブルーノ・ディレオ(Bruno Di Leo)氏が「新しい営業体制を日本で展開するため、4つの地域で支社を開設した」とコメント。東北地域をカバーするために仙台、中部地域の名古屋、関西地域の大阪、西日本地域の福岡に、それぞれ支社を開設した。この施策によって支社・事業所は12を数えることになる。
「(私はIBMが)大企業によく知られた、疑いの余地のないリーダーだと思っている。しかし、日本全国の法人、特にSMBに対して(IBMを)より認識してもらいたい」(ディレオ氏)
イェッター社長も「東京以外のITニーズに対応するのが重要だ」と強調した。
「東京以外の地域でのソリューション提供にチャンスがある。東京以外の地域だけでフランス一国と同じ規模のチャンスがある」(イェッター社長)
ゼネラル・ビジネスがエンタープライズに
日本IBMの変革について、イェッター社長が示したのが資料1だ。
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この資料で最も重要なのは「3. New Coverage Model」で示された三つの施策といえる。
その一つ目の「Increase our focus on "Enterprise" to focus on underserved and new clients」は、エンタープライズ領域の新規顧客に注力することを示す内容。しかし、ここで言う「エンタープライズ」とは「大企業」でも「大規模環境」でもなく、SMBのことだ。
日本IBMは「ゼネラル・ビジネス」という名称でSMB事業を展開していたが、組織再編で「エンタープライズ」に改称したようだ。同社の7月1日付け役員人事からは、「ゼネラル・ビジネス」の冠が付いた事業が、ことごとく「エンタープライズ」へと変わった様が見て取れる(そして「ゼネラル・ビジネス」という名称は消滅した)。この役員人事からは、SMB攻略の組織面でのアプローチが垣間見える内容になっているのだ。
また、SMB市場は、多くの外資系ITベンダーが挑戦し、挫折してきた市場でもある。国産ベンダーが強いSMBに対して、日本IBMは支社の開設による地域カバーの拡充と、パートナーとの協働によって攻略したい考えだ。そのことを示すのが二つ目と三つ目の項目となっている。
特に三つ目には「地域拡大を推進するため、ビジネスパートナーとのエコシステムを再発明する」と書いてある。ZDNet Japanが入手した情報によると、日本IBMでは現在、10万ドル以下の案件はすべてビジネスパートナーに渡すプログラムが走っている。価格は事業部によって異なるが(10万ドルはソフトウェア事業部と見られる)、8月上旬にはこのプログラムが適用されていた。
この施策が、日本IBMによる「エコシステムの再発明」であろうことは想像に難くない。