日本の金融サービスを面白くする

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2013-02-26 13:26

 仕事は社会に何かプラスのインパクトを与えてこそ面白いものである。今年で2回目となる「金融イノベーションビジネスカンファレンス」、略して「FIBC2013」は、日本の金融サービスを面白くするために企画したイベントである。今年は3月18日(月)に品川にある東京コンファレンスセンターで開催する。

 規制の強い金融業界であるが故に失われてしまう利用者の視点。これを取り戻すために、12社の金融サービス領域のベンチャーが新しいサービスをデモスタイルで紹介する。1社7分に凝縮されたプレゼンテーションは、生活者や経営者が本当に必要としている金融サービスが何であるかをきっと気付かせてくれるはずである。

今年の見どころ

 イベントの詳細と参加登録は、こちらの申し込みページを参照頂きたいが、どんなサービスが登場するかダイジェストでご紹介したい。今年は登壇各社にひとことでサービスを表現してもらっているので、企業名と併せて列挙してみよう。

  • 毎月5分でかんたん家計簿=NTTコミュニケーションズ
  • クレジットカード連携クーポン=カンム
  • 経営者視点の会計フロントエンド=クラウドキャスト
  • 顧客の態度変容に即した行動ターゲティング=グーグル
  • スマホでクレジットカード決済ができるサービス=コイニー
  • 誰にでも使いやすいクラウド家計簿=Zaim
  • 全自動のクラウド型会計ソフト freee=CFO
  • 郵送できるクラウド請求書管理サービス=スタンドファーム
  • 家計簿をリデザインするアプリ=ブレインパッド
  • ビッグデータテクノロジーを投資判断へ活用=ホットリンク
  • 自分の信用力が10分で分かるクレジットレポート=マイクレジット
  • スマートデバイス決済プラットフォーム=ロイヤルゲート

 日本ではなかなか普及しなかったオンライン家計簿も、スマートフォンの入力インターフェースを獲得することで、サービス開発が活発になってきている。また、スマホ決済や会計・請求システムなど、個人事業主や中小企業を対象としたサービスが続々と登場しているあたりも、これからのワークスタイルの変化を予感させる。また、ビッグデータを活用したマーケティング、投資判断、信用力診断の仕組みも、まさにこれからの流れだろう。

 登壇企業のサービスを一気に体験することで、金融サービスに何が求められているのか、それを支えるテクノロジのトレンドが何か、これらが結びつくことで、一体何が起ころうとしているのかが理解できるに違いない。

 また、今回のイベントでは、サンブリッジ会長兼グループ最高経営責任者(CEO)のAllen Miner氏、そして楽天銀行副社長の野原彰人氏が講演する。デモ・セッションのモデレーターは、昨年に続いてTechCrunch Japanの西田隆一氏である。


コンセプトをリアリティに

 2月末にアメリカでサービスが開始されるモバイル特化の金融サービス「Moven」のCEOであるBrett King氏の著作「BRANCH TODAY, GONE TOMORROW」の翻訳が出版された。邦題は「リテール金融のチャネル革命 ソーシャル時代の支店のあり方」。本書の監訳とコラム執筆を担当したのは、FIBCの運営チームメンバーである。

 King氏はこの本の中で、AmazonやAppleの例を引きながら、いかにしてテクノロジが既存のビジネスモデルを破壊したのかを議論し、銀行も支店を中心としたビジネスモデルから脱却するべきであることを説いている。

 King氏がすごいのは、単にコンセプトを語るだけではなく、それを「Moven」という形で具現化してしまったことである。そして、それをサポートするテクノロジ、投資家、利用者が存在していることだ。

 FIBC2013は、金融サービス領域における起業家、投資家、テクノロジベンダー、金融サービスの提供者、そして生活者が出会い、議論を交わす場を提供することを通じて、日本の金融サービスを面白くするアイデアが具体化するための触媒となることを狙っている。

 メインセッションの後には、登壇企業のデモブースを配した会場でのネットワーキングの時間も設けているので、是非金融サービスを面白くするための第一歩を踏み出してもらえたらと思う。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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