米国では、クレジットカードを保有していれば、信用情報機関によってクレジットスコアが算出されていて、誰でもそれを照会することができる。また、税務申告も勤務先が源泉するのではなく、個々人が自ら行う。
つまり、自らの金融資産や負債の状況に基づいて、金融機関との取引条件を主体的に把握し、より有利に行うことを常に考えることができる環境にある。また、国に収める税金にしても、常に節税を意識することとなる。
そのため、金融機関が生活者から搾取しようとすれば、非常に強い反発を食らうこととなる。「ウォール街を占拠せよ」運動の発端となったのは、大手米銀によるデビットカード手数料の値上げであった。日本では、金融機関は社会インフラとしての位置付けが強く、手数料よりもむしろサービスの断絶などの事態に対して強い社会的批判を浴びる傾向が強い。
米国では、金融サービスのイノベーションに関する議論も活発で、Finovateのような金融ベンチャーにフォーカスしたイベントも活況である。金融ベンチャーから生活者目線での金融サービスが次々と出てくるのも、生活者が主体的に金融サービスのあり方を考える契機が多く存在していることが一因であろう。
日本においては、以前も触れた通り、金融資産を取り巻く環境は決して改善しておらず、我々はもっと金融サービスのあり方について主体的になる必要がある。MyCredit.jpというサービスはそういう点において、日本人の金融意識を受身から主体的なものへと転換する契機となり得るものだ。
MyCredit.jpは、日本人9000万人のクレジット情報を扱うCICからデータを取得して、生活者のクレジット状況をスコアとして算出するサービスである。また、情報を分かり易く表現することで、生活者がどうすればクレジットスコアを改善し、金融機関との取引条件を有利に導くためのヒントを与えてくれる。
MyCredit.jpでは、全ての借入口座の数や残高などの基本情報を把握できることはもちろん、どういった要素がクレジットスコアにネガティブに働き、どういった要素がポジティブに働くかを示唆してくれる。例えば、返済遅延はもちろんであるが、口座開設からの期間が短かいといったこともネガティブな情報となる。
これまで、金融機関の提示する金利を受け入れるしかなかった生活者も、こうしたサービスを活用することで、金融機関が何を判断基準として評価しているかを把握し、自らのスコアを上げるために主体的なアクションを取ることが可能だ。
MyCredit.jpは、クレジットスコアに関わるサービスであるが、金融サービスのあり方について生活者が主体的な姿勢を取る契機になるという点において画期的である。こうしたサービスの存在は、金融機関に対するけん制になると同時に、生活者視点で求められる金融サービスについての議論を活性化させることに繋がるだろう。
11月までは、通常3500円のところが1000円でレポートを購入できるキャンペーン期間中だそうである。あなたが日本全国でどのあたりにポジショニングされているのか見てみてはどうだろう。
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飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。