スマートフォンの次は腕時計——IT企業が人々の手首と視線を占領する戦いを始めた。ハリー・ウィンストンのような超弩級のラグジュアリーブランドも存在する腕時計マーケットは、「破壊」を仕掛けるのに絶好の状況だという。
本連載「三国大洋のスクラップブック」では、前々回「Google Glass vs iWatch」として、手首と目元を押さえる戦いを解説した。
今回も身体の占領戦について少し書き留めておこう。
アップルが開発中と噂されるiWatchはテレビより儲かるかもしれない——という話が、どうも腑に落ちないからだ。
「テレビより腕時計が儲かる」は本当か?
Bloombergが米国時間3月4日に「iWatchはテレビより儲かるかもしれない」という記事を公開し、それを受けて英語のニュースサイトやブログではちょっとした騒ぎになっている。
CNET News.comでは、こんなトーンでBloombergの記事を紹介している。
アップルの「iWatch、今年中にも登場か」(Bloomberg報道)
消費者がアップルの次の新たな製品を待ちわびるなか、iWatchに関する噂がさらにヒートアップしている。腕時計は、もうひとつの噂になってきているiTVよりも、多くの利益を生み出す製品になりそうだという。
ほかにも、The Verge、FortuneのApple 2.0、GigaOMなど、いつもチェックしているところが軒並みBloombergの報道に言及した記事を公開している。
ただし、WSJ本体や系列のAllThingsD、あるいはNew York Timesや同サイトのブログBitsには、この話題に言及した記事が今のところ見当たらない。
Bloombergの記事で「おかしいな」と感じるのは、製品自体やアップルに関する部分ではない。
「iWatchにはiOSの派生版が採用される」「バッテリーの持ち(駆動時間の長さ)がまだ合格点とはいえない水準」「ジョニー・アイブが直々にプロジェクトに関わっている」——などといった話については、そうかもしれないし、そうでないかもしれないし、としか反応しようがない。そもそもアップルでジョニー・アイブが関わらない製品デザインなんて、これまで存在したのだろうか。
話を戻すと、おかしいと感じるのは、Bloombergが「アップルが破壊(disrupt)しようとしている」と書く腕時計市場の現状がどんなものか、そして、それを破壊できると「テレビよりも儲かる」とする皮算用のロジックの部分である。