IDC Japanの調べによると、クライアント仮想化を投資対効果(ROI)で見ると、全社導入と部分導入と試験導入をあわせたクライアント仮想化製品の平均ROIは359.0%、投資の回収期間は11.6カ月になるという。
つまり、クライアント仮想化製品を使用することで、投資に対して約3倍以上の効果が得られ、1年弱で投資コストを回収できることを意味する。前回の調査ではROIが352.2%、回収期間が13.3カ月。ROIの値が向上し、回収期間が短縮されたことになる。
「全社導入+部分導入+試験導入」の初期投資額、年次投資額、ベネフィットはそれぞれ1人あたり23万7773円、4万3790円、70万5412円。エンドユーザーのクライアント仮想化製品の1日あたりの平均使用時間は約3時間(1日8時間勤務を想定)となった。クライアント仮想化製品を使用している従業員の割合は25.7%だった。
クライアント仮想化製品の導入でエンドユーザー、ITの管理者とスタッフ、企業全体でそれぞれ36.9%、36.5%、36.3%の効果の改善率が見られたという。例えばエンドユーザーでは、平均して36.9%のROIが得られたことを意味している。
調査では、クライアント仮想化製品を「全社導入」「全社導入+部分導入」「全社導入+部分導入+試験導入」の3つのグループでROIを算出すると、それぞれ743.1%、437.7%、359.0%。投資回収期間で見るとそれぞれ7.7カ月、9.8カ月、11.6カ月となった。
クライアント仮想化製品をROIの観点から考えると、全社導入が最も大きく、投資回収期間も短く、このグループのROIは突出している。試験導入や部分導入を経て全社導入するよりも、ROIを向上させることができると分析している。全社導入の方がクライアント環境の管理効率化やエンドユーザーの使用環境向上などで、より高い効果が得られることを意味している。
IDC Japanの渋谷寛氏(PC、携帯端末&クライアントソリューションシニアマーケットアナリスト)は「ITの有用性を計測する定量的指標としてROIに注目すべき」と提言する。
その理由として「クライアント仮想化を含むIT投資は今後、ますます企業経営に密接に連携していく。目先のコストと見るのではなく、リターンを期待できる投資ととらえることが望まれているからである」と説明。このことを踏まえて、渋谷氏は以下のように提唱している。
「ITベンダーは、エンドユーザー環境に対する投資対効果を測定した上でクライアント仮想化を提案すべき。その分析結果を経営者と共有することで、クライアント仮想化の役割と重要度の理解が進む」