IDC Japanは11月12日、国内のクライアント仮想化市場の主要ベンダーの競合状況を分析し、結果を発表した。同市場をシンクライアント専用端末、ソフトウェア、ソリューションの3分野に分けてみると、上位ベンダーがいずれも高いシェアを確保しており、ベンダーシェアの順位は変動していない。
2011年のシンクライアント専用端末市場のベンダーシェアは1位がWyse Technology(現在はDell)で、Hewlett-Packard(HP)やNEC、日立製作所、富士通がトップ5社となっている。その中でWyseとHPの2社の実績が突出しており、3位以下を大きく引き離している。
ただし、価格戦略を取るHPと差別化戦略のWyseは対照的な戦略と説明。端末やプロトコル、クライアント仮想化ソフトウェアの標準化が進み、マルチベンダー環境でもほぼ問題なく稼働するため、ベンダー間のスイッチングコストは低いと考えられるとしている。新規参入の観点から見ると、参入障壁は中程度と説明している。
2011年の国内のシンクライアント専用端末とターミナルクライアント市場の出荷台数ベンダーシェア(出典:IDC Japan)
2011年のクライアント仮想化ソフトウェア市場のベンダーシェアでは上位5社にMicrosoft、Citrix Systems、VMware、NEC、Oracleとなっている。特にMicrosoftは50%以上のシェアを維持しているという。市場全体の成長率が高い中でCitrixとVMwareがシェアを伸ばしているところに仮想化専業ベンダーの勢いがうかがえるとしている。
IDCはMicrosoftの強みは3つあると説明。アプリケーションとデスクトップ、プレゼンテーションという3区分のすべてで製品を提供できる点、CitrixやVMwareのクライアント仮想化ソフトウェアがMicrosoftのライセンスが前提となっている点、企業で莫大なWindows資産が保有されている点という3つだ。この市場での新規参入は難しく、先行者利益が大きいため、参入障壁は高いとみている。
2011年のクライアント仮想化ソリューション市場のベンダーシェアは1位から3位が富士通、日立、NECで、HPとIBMの2社が追従している。富士通はCitrixとグローバルで提携しているほか、MicrosoftやVMwareとも連係しており、仮想化案件を全社でまとめる部門を設置して強化している。
富士通は、シンクライアントのブランド「FUTRO(ヒューロー)」を立ち上げるとともに、欧州のシンクライアントベンダーであるUniCon Softwareを買収、画面転送プロトコル「RVEC」を開発するなど、クライアン仮想化関連技術を戦略的に進めている。同市場への新規参入障壁は低いとし、今後も多くのSIerが参入してくる可能性が高いとみている。
同社の渋谷寛氏(PC、携帯端末&クライアントソリューションシニアマーケットアナリスト)は「クライアント仮想化関連の主力ベンダーはほぼ定着している。一方今後の買収や合併で勢力図が崩れる可能性もあるため。海外の動向も踏まえた上で注意を払う必要がある」とコメントしている。