はじめに
皆さんは、仕事で使う資料をどのように管理していますか。
文書の整理というのは昔からある問題であり、いまだに「これが決定版だ」という解がないように思います。しばらく前からは、この「紙の文書」に「デジタルのデータ(電子ファイル)」が加わり、「文書・データ整理」が資料管理上の課題になっているようです。仕事を効率的に進めるにあたって避けて通れないテーマであるとも言えるでしょう。
そこでこの連載では「文書・データをいかに整理して行くか」についての基本的な考え方を「情報整理術」と銘打って、以下の3つの論点から述べて行こうと思います。
- 第1回 紙とデジタルのバランスの取り方
- 第2回 捨て方・残し方の基準づくり
- 第3回 分け方・名付け方のポイント
「情報整理」の定義はなかなか難しく、十人いれば十通りの定義がなされてしまう言葉だといえます。しかし、暫定的であっても定義がなければ話は進みませんから、本稿では以下のように定義しておきます。
情報整理の定義
紙情報とデジタル情報のバランスの取り方
前述の定義の中に「必要に応じてタイムリーに利用ができるように」という表現がありました。ここで一つ考えなければならないことがあります。利用の場面では、どのような媒体が適しているのかという問題です。要するに紙媒体を利用するのかデジタル媒体を利用するのかということですね。
紙にもデジタルにもそれぞれ特徴があり、その特徴を生かした媒体の使い分けが望まれます。図に主だった特徴を挙げてみましたが、これを眺めていると自ずとそれぞれの媒体の使いどころが見えてきます。
図:紙とデジタルの特徴
例えば、企業間の取り引きの記録などは大量に保管し、素早い検索が求められる場面が多いと考えられます。「以前、この商品を納入してもらった時の単価はいくらだっただろうか、その時の支払い条件はどうだっただろうか」というようなことを瞬時に把握するためには、検索性に優れていなければなりません。こうした場合はデジタルで保存するのがふさわしいと言えるでしょう。
一方、契約書のような原本性の確保が求められる文書はどうでしょうか。「これは本当にオリジナルのもので、勝手に内容が改ざんされたりしていないですよね」と問われたときに、それを証拠だてることが比較的容易なのは紙の方だと考えられます。紙文書ならば、印鑑やサインで比較的容易に原本性が確保できます。電子ファイルで原本性を確保しようとすると、デジタル署名を付与するなどコストが掛かります。
このように、紙とデジタルは適材適所で使い分ける必要があります。ただ、情報技術は日進月歩で高度化しているので、デジタル媒体のデメリットは少しずつ克服されていくことも期待できます。
紙文書は、木材パルプという貴重な資源を消費しているという側面もありますから、これからますますペーパーレス化の流れが強くなっていくことが推測できます。どうしても「紙のメリット」が必要だという文書以外は電子ファイルとして保管、保存することを考えてみてはいかがでしょうか。紙の文書が必要最小限になれば、「必要な情報を必要に応じて」取り出すことも容易になっていくことでしょう。
次回は、「いかに捨てるか」ということに焦点をあてて、「捨てる/残す」の判断をする際の基準をお知らせします。
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- 仁宮 裕
- 産業能率大学総合研究所 主幹研究員
- 民間企業にて、ソフトウェア開発/システムインテグレーションに従事。2004年産業能率大学総合研究所入職。企業および自治体に対して各種ビジネススキル研修、マネジメント研修を実施。産能マネジメントスクールにおいて、公開セミナー「文書・データ整理術」他の講 師を担当している。主な著作物:「業務革新 理論と実践」産能大学出版部(共著) 所属学会:経営情報学会