ガートナー ジャパンは7月9日、日本企業のグローバルITへの取組状況の調査結果を発表した。日本企業のあいだでIT基盤とアプリケーションのグローバル最適化に向けた動きが進展している様子が浮かび上がってきたと表現している。
財務や会計、人事給与などバックオフィス分野では、海外でのシステムの一部またはすべてを本社と共通化しているIT部門がすでに40~50%に上っている。IT部門の計画によると、この比率は今後3年以内にさらに上昇するという。特に年商1000億円以上の企業のIT部門で積極的な取り組みが見られ、財務や会計、資産設備管理の分野でのグローバル共通化の割合は今後3年以内に10ポイント近く増加する見込みとなっている。
営業支援やマーケティング、分析、顧客管理などのフロントエンド分野では、部分的な共通化を志向するIT部門が多数存在し、地域市場の特徴にあわせたオペレーションの強化が広がっている現状が明らかになっているという。こうした動きは、ベンダー選定にも影響を及ぼしており、グローバルでのサービス網をベンダー選定上重視しているIT部門は全体で19.6%、年商1000億円以上の企業では32.4%に上っている。
日本企業でのシステムのグローバル化状況と計画(出典:ガートナー ジャパン)
こうした日本から海外への“アウトバウンド”のグローバル化とは対照的に、海外から日本への“インバウンド”のグローバル化であるオフショアリングには一巡感が見られるとしている。調査結果からは、日本企業のオフショアリングの利用意向は2012~2013年にほとんど変化が見られなかったという。
中国を中心としたオフショアロケーションでのコスト上昇と円安の影響が顕在化し始めていることから、IT部門では、ロケーションの多様化とニアショアリングへの関心が高まっていると説明。オフショアリングとニアショアリングでは、ロケーションを選択する要因に差異が出てきており、今後は一部の国内回帰も含め、最適なロケーションの組み合わせを求める動きが一層強まると分析している。
多くのIT部門にとって、組織とシステムのグローバル化は未経験の領域だ。拙速な展開は品質低下やガバナンスの混乱といったリスクを伴うとガートナーは注意を喚起している。今後、品質とスピードのバランスというグローバル化に伴う難題に直面するIT部門が増加すると予測する。
この課題を克服するためには、プロジェクト管理、需要管理、ベンダー管理、契約交渉といったソーシングの基本的なスキルを磨き上げる必要がある。加えて、国境を越えてクラウド、内製、アウトソーシング、グローバルソーシングの中から最適な方法を選択し、組み合わせていくことも必要になると解説している。
ガートナーは7月26日にイベント「アウトソーシング&戦略的パートナーシップ サミット 2013」を開催する。同イベントでは、調査結果の詳細とともに、IT部門に提言する。