旭硝子グループは拠点間の会計基盤を統一し、連結会計処理業務の省力化や、業務プロセスの標準化による効率化に取り組んでいる。システムを構築したSAPジャパンとアクセンチュアが7月8日に発表した。
旭硝子(AGCグループ)は、「ガラス」「電子」「化学品」の3カンパニー体制を敷き、グローバルに事業を展開している。同社はグローバル戦略を加速するためにも地域やカンパニー別のマネージメント基盤を統合し、グループ間の連携をしやすくする経営体制の確立を目指していた。
AGCグループでは従来、グループ会社ごとに会計の基盤を構築しており、勘定科目をはじめ会計データを扱うコードや体系が統一されていなかった。また、制度連結と管理連結のシステム環境が異なっており、本社で連結会計処理を行う際は、Excelで作成した財務情報をグループ各社から収集していたという。
そこで同グループでは、制管一致や連結会計情報の早期把握による経営スピードの向上を目的に、連結会計ソフトウェア「SAP Financial Consolidation」の導入し、2012年1月から運用している。これにより国際会計基準(IFRS)に準拠した連結ルールに日本の会計基準(J-GAAP)の設定を加えて開発し、複数の会計基準へ対応した。
同社では、業務プロセスの統制強化や連結報告業務の省力化、国別要件への対応を含めて、グループ会社向けの会計や購買システムを統合基幹業務システム(ERP)パッケージの「SAP ERP」とビジネスプロセス管理(BPM)システム「SAP NetWeaver Business Process Management」で構築し、日本やアジアのグループ各社へ導入を進めている。
システムはアクセンチュアが構築した。AGCグループの「標準モデル」を作るために、「課題の抽出」「業界の商習慣」「会計プロセスの違い」を見極め、国内、海外の各拠点に対し、展開と連携を可能にさせることに注力した。
Financial Consolidationの導入後は、連結会計処理の効率化が進み、月次の連結処理で、経営層向けに作成していた管理業績資料の作成期間が8営業日から5営業日に短縮できたという。また、グループ連結損益情報をいち早く把握し、次のアクションをしやすくなった。
グループ各社の財務情報入力がウェブベースになったことで、Excelでの運用時と比べ効率化した上、グループ会社と同じ画面を見ながら報告内容を確認できるため、意思疎通も図りやすくなった。また、SAP ERPとの自動連携化により報告業務工数の削減も達成できた。
連結計算に要するシステム処理時間は、従前のシステムと比べて10分の1となる20分程度に短縮された。グループの業績管理をビジネスユニットで行っている同社にとって、各ビジネスユニットの業績を早期に把握することは、迅速な意思決定を行う上で欠かせないという。
今後はSAPアプリケーションをベースに標準プロセスが実装された「標準モデル」の導入により、ガバナンスを強化する。今後も各拠点への展開やグループ各社のシステムが同一のERPで統合されることで、連結会計処理のさらなる効率化を進め、蓄積されたデータの活用範囲を拡大していく見込みだという。