本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本オラクルの執行役員、飯尾光國氏と、日本HPの常務執行役員、中川いち朗氏の発言を紹介する。
「オラクルにとって富士通が重要なグローバルパートナーであることに変わりはない」(飯尾氏)
日本オラクルの執行役員、飯尾光國氏
日本オラクルが7月8日、ハードウェア製品戦略について記者説明会を開いた。同時に同社が推進するエンジニアド・システムで最も高速処理を実現した「Oracle SuperCluster T5-8」も発表した。同社でシステム事業を統括する飯尾氏の冒頭の発言は、その会見で、サーバ事業で長年のパートナーである富士通との関係について語ったものである。
オラクルが推進するエンジニアド・システムは、ハードウェアにデータベースやミドルウェアなどを統合することにより、用途ごとに最適な利用環境を高い価格性能比で迅速に使えるようにした、同社独自の設計思想に基づく製品である。
飯尾氏によると、ハードウェア製品戦略からみて「オラクルのソフトウェアに最適なハードウェア」を提供することを使命としており、これをして最近では「Oracle on Oracle」というキャッチフレーズを前面に押し出している。6月から始まった2014年度のハードウェア製品戦略も、このOracle on Oracleの価値訴求に注力していく構えだ。
今回、同社が発表したOracle SuperCluster T5-8も、Oracle on Oracleを体現した戦略製品の1つである。同製品は、最新のUNIXサーバ「SPARC T5-8」をベースとしたエンジニアド・システムで、前世代のOracle SuperClusterと比べて性能を2.5倍向上させたという。
具体的には、16コアの「SPARC T5」プロセッサを最大8個搭載したSPARC T5-8サーバをベースとしてOSに「Oracle Solaris」を搭載。ストレージコンポーネント「Oracle Exadata Storage Server」、ミドルウェア処理を高速化する「Oracle Exalogic Elastic Cloud Software」、アプリケーション実行ノードの接続に標準技術であるInfiniBand、統合ストレージ基盤「Sun ZFS Storage 7320 Appliance」などを組み合わせ、最適化された状態で提供される。
さて、今回の新製品は、日本では4月に発表されたミッドレンジ向けのSPARC T5サーバをベースにしたシステムだが、同時に発表されたハイエンド向けの「SPARC M5」サーバとともに、これらのパートナー展開において気になる点がある。それは、飯尾氏が言うようにオラクルのグローバルパートナーで、長年にわたってSPARCサーバを国内でOEM販売してきた富士通が、T5/M5サーバの扱いについて態度を表明していないことだ。
この点について、会見の質疑応答で飯尾氏に確認してみたところ、「交渉中であり、現時点では未定」とした上で冒頭の発言となった。関係筋からは「交渉はまもなくまとまりそうだ」との声も聞かれるが、まとまるとすれば果たしてどのような契約形態になるか。富士通がどこまでOracle on Oracleの世界を取り入れるのか。