「日本のものづくりはすばらしい」という文脈展開を想像させた上で、樋口氏は「いつまでも『プロジェクトX』の感傷にひたっていては世界から取り残される」と裏返した。
意図しているのは、いわゆるロングテールを軸にした経済への対応だ。「Amazonの売り上げの大きな比率を占めるのは、ベストセラー商品ではなく、無数にあるマイナー商品の売り上げ」などと説明されることが多い。Amazonでの状況はともかく、商品の陳列スペースなどに制限がないといった特性をうまく使うことで、売れ筋商品に大きく頼らないビジネスを展開できるのがインターネットを前提にしたビジネスの特徴だ。
その時、1つ売れるか売れないかも分からない無数の商品群に対して、職人のノウハウを適用できるかといえば、難しい。その比率が大きくなるとすれば「マシンで置き換えなければならない」(樋口氏)と考えるのは合理的である。
裾(テイル)部分の売り上げ比率が高まる場合、処理をマシンで置き換える、自動化するなどの工夫が必要になってくる
「モノよりデータのつながり」の時代へ
さらに、樋口氏の言葉で印象的なのは「今後はモノよりも、データのリンケージの方が重要になる」との指摘だ。
先日、PLM(プロダクトライフサイクル管理)ソフトウェア大手、米PTCの記事で、「Product as a Service」(サービスとしての商品)という考え方を紹介したが、樋口氏の指摘と一致する面がある。
例えば、フランスの自動車メーカーRenaultは、販売店やメディアでのセールスプロモーションから、カスタマーサポート、修理、買い換えに至るまでのサービスを、一貫した形で提供することを心掛けている。「自動車の価格には、ドライブすることで得られる体験やインターネットを利用した情報提供といったアフターサービスも含まれる」とする。
Renaultは一部のモデルに、Android搭載の情報端末を組み込み、カーナビゲーションシステムとしての機能はもちろん、走行情報などを収集し、メンテナンスや部品交換の時期予測などを行って、ベストなタイミングで顧客に情報を提供する。
収集したデータを使い、サービスで収益を上げるというビジネスモデルへの挑戦だ。
ここで、自動車本体の価値の位置づけは、サービスを買ってもらうためのきっかけに過ぎないということになる。まさに、モノよりもデータリンケージであるわけだ。
言葉主導のイメージもあり、過熱感もある「ビッグデータ分析」だが、学術的な観点からも、今後の実体を伴った動きが期待されている。
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