エリック松永のメディア・デモクラシー講座

「テレビ番組制作の黄金時代」からこれからのメディアの価値を再考する - (page 2)

松永 エリック・匡史(プライスウォーターハウスクーパース)

2013-08-09 18:00

なぜ放送局から独立して「もの」を作ろうとしたのか

エリック松永 より良いコンテンツを制作したいという思いはいつの時代も同じですが、約40年前、テレビ局から離れて番組制作をしようと立ち上がったテレビマンユニオンには、どんな背景があったのでしょうか。当時、もの(番組)を作る役割と放送を行う役割両方を放送局が担っている中、テレビマンユニオンが放送局から独立して「もの」を作るのは自分たちだと宣言し、制作会社を興した理由は何なのでしょうか?

碓井氏 テレビマンユニオンができたのは1970年2月。1953年に放送が始まってからそれまでは、番組制作と放送の2つをテレビ局が一手にやっていました。1970年に日本にそれまでなかった会社としてテレビマンユニオンが始まったのです。いわば突然変異です。それ以来、たった一社だった制作会社が何百社となりました。今日本で作られる番組で75~80%は制作会社がかかわっています。今、すべての制作会社が活動をやめたら、テレビは8割が真っ暗な画面になってしまいます。それぐらい今の放送業界にはなくてはならない存在となってきました。

 テレビマンユニオンを創立した人たちにとっては、組織の中におけるクリエイターの限界を感じていたというのが一番大きかったと思います。放送局がビジネスとクリエイティブの両輪で回っているとすれば、(放送局の中で)クリエイティブのほうに特化しているという立場が難しくなってきたということがあったのだと思います。当然のことながら、放送は国民の財産である電波をお借りしてやっている事業です。

 そういう意味で、クリエイティブ行為を突き詰めていくとき、企業としての放送局との間にあつれきがありました。自分たちは会社員なのか、モノを作るクリエイターなのかという問いを突きつけられていたのです。その時に、「モノをつくりたい」という想いにかけようじゃないか、ということだったと思います。コアメンバーは10人程度のわずかな人数でしたが、そこからすべて始まりました。

テレビマンユニオンが持つ独自の報酬体系システム

 ただ、当時の放送業界では最初から衝撃というようなものではありませんでした。業界全体の雰囲気としては、「ああ、無謀なことをはじめたな、半年くらいでつぶれるだろう」というくらいの見方をされていたと思います。制作会社というのが単独で成り立つはずがない、需要もないだろうと、それくらい冷めた反応でした。

 それが段々変わり始めました。なぜなら、制作会社として作ったコンテンツが局内のクリエイターが作ったコンテンツとは何か違うな、ということが認められ始めたからだと思います。なぜそういった違いが現れるのか。ひとつは「自分たちは何を対価に報酬をもらっているのか」の意識の差があると思います。

 例えば、いまだにテレビマンユニオンは、いわゆる給料ではなく出来高制です。つまりコンテンツを作って初めて報酬を得ることができるシステムを設立当初から実施しているのです。創立メンバーが参考にしたのはベルリン・フィルと相撲協会のシステムだといわれています。自分たちで仕事をつくり、その分だけ報酬を得る。働かざるもの食うべからず、働くのだったら、その場を自分でつくれと、そういう意識でいました。

 一方、自分たちが単純にやりたいことをやるということではなく、オーダーを受けることにクリエイティビティーを発揮したということがあったからうまくいったという側面もあると思っています。

 つまりやりたいことがあるから独立したという話ではありません。先方からオーダーされた枠の中で、見る人がどれだけ楽しいかを追求してきました。制約とコンテンツにかける想い、両方が相まって、結果的に、局のような組織のルーティンからは出てこない発想のコンテンツを作り続けてきたのではないかと考えています。

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