電機大手決算を読む:過去の業績が足かせ--“追い風”にのって成長戦略を描けるか

大河原克行

2013-08-27 16:01

 電機大手8社の2013年度第1四半期(4~6月)をまとめて見てきた。前回と今回は各社を個別に見る。

 前回は日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝をまとめた。今回は富士通、三菱電機、NEC、シャープの業績を見てみよう。


(各社資料をもとに作成)

産業などの分野で受注が計画上回る富士通

 富士通は、売上高が前年同期比4.4%増の9992億円、営業損失は前年同期から39億円改善したものの228億円の赤字、経常損失は前年同期から81億円改善したが187億円の赤字、当期純損失は前年同期から35億円改善したが219億円の赤字となった。

 為替が大きく影響した海外の売上高は前年同期比22.8%増の4154億円と大きく伸長。これに対して、国内の売上高は同5.7%減と前年実績を割り込んだ。


富士通 取締役 執行役員 専務 加藤和彦氏

 「海外は為替を除くと3%の増収にとどまる。一方で国内は携帯電話やPCなどのハードウェア製品を中心に減収になった」(富士通 取締役執行役員専務 加藤和彦氏)と総括する。

 売上高への為替影響は約650億円。これがなければ減収となっていた計算だ。収益では、改善傾向にはあるものの、赤字脱却が遅れている状況にある。

 だが、「構造改革効果が、半導体ビジネスは第2四半期(7~9月)以降、欧州ビジネスでは第3四半期(10~12月)から貢献することになる」(加藤氏)と回復への道筋を歩んでいることを強調する。

 テクノロジーソリューションではUNIXサーバの新製品の立ち上げが遅れていること、ユビキタスソリューションでは個人向けPCの市場縮小や収益重視の方針へシフトしたことによる欧州でのPC販売の減少、円安によるPCの部材コストの上昇、携帯電話の販売減少が影響したという。

 その一方で「ソリューション/SIでは、産業や金融、公共の分野で好調な受注が継続。受注も2桁増のペースで伸びており、計画を上回っている」(加藤氏)と明るい兆しも見られている。

円安で全セグメントが増収の三菱電機

 三菱電機は、売上高が前年同期比6.7%増の8348億円、営業利益は同26.6%減の341億円、税引前四半期純利益が同11.3%減の426億円、当期純利益が同16.4%減の254億円となった。

 日米での景気が底堅く推移したこと、為替が円安基調で推移したことですべてのセグメントで増収。円安による売上高へのプラス影響は約670億円だったという。だが、重電システムや産業メカトロニクス、情報通信システムで減益となったことで、全体では減益決算となった。

 情報通信システムでは、売上高が前年同期比10%増の1037億円、営業損失は16億円悪化の9億円の赤字。通信事業は通信インフラ機器の需要増加、電子システム事業も電子事業が増加したことが増収に貢献したが、情報システムサービス事業は前年並みの実績にとどまったという。

 家庭電器は売上高が前年同期比6%増の2185億円、営業利益が7億円減の122億円の増収減益。国内向け太陽光発電システムやルームエアコン、北米とアジア向け空調機器の販売が好調だったという。

営業利益1000億円を目指すNEC

 NECは、売上高は前年同期比1.4%増の6401億円、営業損益は前年同期から139億円悪化の218億円の赤字、経常損失は160億円悪化の281億円の赤字、当期純損失は36億円悪化の214億円の赤字となった。

 セグメント別業績は、パブリック分野の売上高が前年同期比10.1%増の1266億円、営業利益が3億円増の4億円。官公庁や公共向け事業が堅調に推移したことが増収要因となった。エンタープライズは、売上高は前年同期比17.4%増の587億円、営業損失は2億円改善したものの24億円の赤字が残った。

 流通・サービス業向けが順調に推移し売り上げが増加したという。テレコムキャリアは前年同期比0.7%減の1540億円、営業利益は71億円悪化し56億円。システムプラットフォームは、売上高が前年同期比3.3%減の1577億円、営業損失は48億円悪化し66億円の赤字となった。「システムプラットフォームは、前年に大型案件があったために減収。売り上げ減が収益の悪化につながった」(NEC 取締役 執行役員兼最高財務責任者=CFO 川島勇氏)という。

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