クラウドはマイナス要因ばかりなのか?
では、クラウドはSIからみて不利な点しかもたらさないのだろうか。特に中小規模のSIは、これまで負荷の高いシステムにはなかなか手を出せなかった。だが、クラウドはさまざまなオープン化されたIT資源を組み合わせ、変更があっても柔軟に、また短期間で対応できる。この点を生かし、クラウドを武器として事業を展開していけば、ベンチャー級の企業でも大手企業の大規模システム構築に参画する可能性も出てくる。SIもクラウドをうまく利用した事業構造へと変革することを余儀なくされているといえよう。
それでは、SIがクラウドを前面に打ち出した展開をするとどうなるか。1つの例として、米Appirioの取り組みが挙げられる。同社は2006年に設立され、クラウドを機軸とするSIとして知られる。同社の日本法人は「Appirioの4人の創設者は、エンタープライズソフトウェア業界で長年にわたり従来のシステムの設計や実装に従事してきたが、クラウドの可能性を2006年に見出した。以来、クラウドプラットフォームは著しく成熟し、企業もクラウドへ移行することで既存のビジネスプロセスを改善し、顧客、パートナー、従業員との関わり方を変えられることを証明している」と理念を語る。
Appirioは大手から中堅までの企業に対し、Salesforce.com、Google、Workday、Amazon Web Services(AWS)などを用い、クラウドアプリケーションの実装、拡張、プラットフォームの連携などを手掛けてきた。2012年には受注は前年同期比50%増となり、100社以上の新規顧客を獲得したのだという。