一方でデバイスのみならず、デバイスに組み込まれるアプリケーションは、活用方法や想定ユーザーによって、これまでのアプリケーションや使われ方とは大きく異なることが想像できる。しかしながら、このスマートデバイスのカテゴリーについては、電話に加え、閲覧目的のガラケーや資料作成と業務処理目的のノートPCのように用途がはっきりしているわけではなく、まさに今、さまざまなユーザー側のアイデアやこれまでの業務上のさまざまな課題を克服する使い方が求められる。
逆に考えると、これまではガラケーやノートPCで充足されてこなかったことがスマートフォンやタブレット、それを用いて行う業務課題の解決に期待されるところだ。
このようなデバイスを使うことを期待するユーザー、もしくはすでに個人でも活用しているユーザーは一日中外出していたり、ずっとオフィス外で動き回って仕事をする、いわゆるモバイルワーカーであり、これまではPCが貸与されていないか、高価な専用端末での業務処理を中心に利用していたワーカーだ。彼らは基幹業務アプリケーションにアクセスしようとすれば、事務所に帰って別のパソコンで行うなど、生産性や直行直帰できるワークライフバランスを犠牲にしてきた過去がある。
彼らにとっては、基幹システムに外部からアクセスしてさまざまな業務処理を行いたいし、必要な情報をお客様の前で引き出して在庫確認や承認を得たいというニーズもあり、それらはほとんどが顧客接点で必要とされるリアルタイムな対応と専門的知識のタイムリーな提供なのだ。このモバイルワーカーの現場では往々にしてその場ですぐ答えたい、よりよいソリューションを組織内から引き出して回答したい、今すぐ受注確定するために在庫を知りたいというニーズが存在する。

アプリケーションに対するニーズの変化
ところがそれらは基幹系アプリケーションがモバイルに最適化されていなかったり、セキュリティの観点からアクセスが禁じられていたりするのが実態で、一部のアプリケーションを除き、PCと同様に業務完結できるレベルには甚だ遠い状態である。今までPC中心に考えられてきた環境とこの点が、ニーズに対するアプリケーションの実現レベル、いや開放度といってもいいようなレベルで大きなギャップが存在しているのだ。
今後、ダイバーシティや労働力確保、そしと生産性や創造性向上といった目的のためにワークスタイルを最適化する上では、PC時代から明らかに変化しているこのニーズの変化に対応する必要があるだろう。
次回は、スマートデバイス導入におけるさまざまな落とし穴について、現場のプロジェクト事例も交えて言及するとともに、検討すべきポイントなどについても解説する。
- 八子知礼(やこ・とものり)
- デロイト トーマツ コンサルティングパートナー 情報・通信・メディアセクターリーダー。通信、メディア、ハイテク業界を中心に、新規事業戦略立案、CRM/顧客戦略立案、商品/サービス/購買戦略、バリューチェーン再編などのプロジェクトを多数手掛けている。著書に『モバイルクラウド』『図解 クラウド早わかり』(いずれも中経出版)、そのほか寄稿・講演多数。
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