過去1年間の「Windows 8」に対する賛否両論の評価を要約するとすれば、分かりにくい、矛盾、未完成の3つになるだろう。
Windows 8のリリースからほぼ1年経った米国時間10月17日、Microsoftはその後継OSをリリースした。「Windows 8.1」(Windows 8ユーザーは無料でアップデート可能)は、前OSの悪名をすすぎ、警戒する消費者と企業顧客を説得して、新しいWindows搭載ハードウェアを選ぶのが賢い選択であると思わせるという、手強い壁に挑むことになる。
Windows 8.1のスタート画面
筆者はWindows 8.1のプレビュー版と最終版を、過去数カ月にわたってさまざまなデバイスで利用してきた。使用したデバイスには、従来のデスクトップPCやノートPC、タッチスクリーンを備えたオールインワンPC、タブレット、そしてその他の形もサイズも異なるタッチ操作可能なさまざまなデバイスが含まれる。
この記事の準備を進めていた時、筆者はそれらのマシンのいくつかを、Windows 8に戻して数日間使用してみた。その経験から、Windows 8.1で導入された変更はかなり大きなものであり、早い時期にWindows 8を導入した人たちが乗り越えなくてはならなかった障害の解消に、大きく貢献していることを改めて感じた。
ただし、Windows 8.1の新しい機能や新アプリ、改善点は、おそらくWindows 8を毛嫌いしている人に、考えを変えさせるほどのものではない。Windows 8のデザインそのものが間違った方向に進んでいると思う人は、この記事を読み進めても得ることは少ないだろう。Windows 8の基本的な方向性は正しいが、やり方がまずかったと考えていた人であれば、Windows 8.1を真剣に検討する価値はある。
Windows 8.1には、前OSと比べて、エコシステムがはるかに整っているという利点がある。Windows 8の発売時には、そのために設計されたタッチスクリーンデバイスの多くは、まだ世に出ていなかった。そして、入手可能だったデバイスも多くの場合価格が高すぎた。今では、ほとんどすべてのPCのOEM企業から、安価なタッチスクリーン付きノートPC、タブレット、オールインワンPCが発売されている。
今回の一般向けリリース(Microspeakの呼び方では一般提供版《GA版》)には、意外な要素はない。新機能の多くは、3カ月以上前から一般公開されていた、Windows 8.1プレビュー版ですでに提供されていたものだ。MSDNとTechNetの会員とボリュームライセンス購入顧客に、9月の初めから提供されていたRTM版では、いくつかの追加機能が導入された。
むしろ、今回本当に重要なのは、その提供範囲の広さだ。今後30日程度で、すべてのWindows 8 PCに対してこのアップデートが提供されるはずだ。広範囲にリリースされるのに加え、Microsoftはバックエンドサービスを充実させた。これには、Windowsストアの改善と、Windows 8.1に同梱される新アプリへの機能追加が含まれる。
日常的な利用では、Windows 8.1はWindows 8よりもずっと洗練されていると感じる。Windows 8の多くの粗い部分(すべてではないが)は、改善された。未完成だった部分は、ほぼ完成したと言っていいだろう。MicrosoftがWindows 8で下した決断のうち、異論が多かったものの一部は(全部ではないが)元に戻され、特にスタートボタンをなくすというアイデアや、新しいユーザーが違和感を乗り越えるためのオンラインチュートリアルがない点が改善されたのは大きい。
しかし、全体から見ると、スタートボタンの復活は小さな問題に過ぎない。Windows 8.1の設計目標は、主に異論に対応するためのケーススタディだと言ってもいいかもしれない。
以下では、Windows 8に対するよくある異論について考えていこう。