“都市OS”上で多様なクラウドを展開
地域の電力消費データを一元的に管理することにより、周辺サービスも提供しやすくなった。例えば、HEMSを設置した家庭で電力使用状況を見るためのサービス。これを開発した地元ベンチャー企業、会津ラボの久田雅之氏は次のように説明する。
「PCやスマートフォンなど異なるOSとサイズ、形状の画面に対して、同じコンテンツを届けるために多くの企業が苦労しています。現状では、複数プラットフォームに向けて複数のデザインを用意するのが一般的。これでは非効率です。そこで、レスポンシブウェブデザインという技術を用いて、1つのコンテンツを複数デバイス向けに柔軟に表示する仕組みを開発しました」
元になるコンテンツが1つなら、制作コストとメンテナンスコストを抑えられる。久田氏は今回の実証実験でさらにノウハウを蓄積して、幅広い分野にこの技術を展開する考えだ。
先に、メーカー縦割りのデータ集約に伴う課題を指摘したが、同じ縦割りはスマートシティの至る所に存在する。電力と上下水道、行政サービス、医療、農業などなど。これらの分野ごとに縦割りのシステムを構築すれば重複投資が増える。そこで、中村氏が示すのが“都市OS”というコンセプトである。
「各分野固有の要件はありますが、統合できる部分も少なくありません。そこで都市OSのような基盤を作り、その上でエネルギークラウドや行政クラウドのようなサービスを展開するのが合理的。多様なクラウドの真ん中にあるのがデータです。それが会津若松市の目指す方向であり、スマートグリッド事業はその第一歩だと考えています」
都市OSはまだコンセプトの段階だが、その賛同者は増えている。アムステルダム市も同じ考え方でスマートシティ化を進めているという。この方向でスマートシティプロジェクトを推進するためにも、縦割りの壁を取り払う必要がある。既得権益グループに対する説得は容易ではないだろう。それだけに、しっかりしたプロジェクト推進体制を持つ会津若松スマートシティに対する期待は大きい。
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