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エンジニアは不可能を前提にしてはいけない--米パロアルトのズークCTO - (page 2)

大川淳 山田竜司 (編集部)

2013-11-28 07:30

アプリケーション活用と安全性確保の両立が成長の原動力

--Palo Alto Networksは次世代ファイアウォール市場で高いシェアを獲得している。 短期間のうちに急成長できた秘訣は何か。

 好調な理由は2つある。まず、個別の製品やサービスを効果的に組み合わせ単一のデバイスにまとめて提示している手法が評価されていること。実際に市場に出回っている、不正な攻撃に対抗する製品は、そのほとんどがメールと、ウェブブラウジングに特化しているが、われわれはそうではないからだ。つまり、それらの製品は(メールの)添付ファイルに危険な因子が含まれていないか監視する。ブラウジングの際、データが漏れていないかなどを監視することはできる。しかし、日本の企業はMicrsoftの「Office 365」や「SharePoint」、「Googleドキュメント」、インスタントメッセンジャー(IM)などを使っているだろうが、メールとブラウジング上での対策だけでは、きちんとこれらの内容を検知できない。例えば、既存のそのような対策では「Office 365がどんなトラフィックでマルウェアとやり取りをしているか」といったところまではわからない。

 IMのトラフィックも内容を検出できない。SharePointのトラフィックも同様だ。これまでの対策製品は、アプリケーションまでブロックしてしまうか、アプリケーションは使えるが安全性に問題ありか、この二者択一だった。われわれが提案しているのは、アプリケーションを使うことができ、なおかつ安全性を保持できるものだ。このような点がわれわれの市場シェア拡大の原動力になっている。

--パブリッククラウドが台頭しているが、セキュリティ面ではどんな状況なのか

 現状では、パブリッククラウドには主要な企業が使える水準のセキュリティが、未だ準備されていない段階と言える。今のところ当社を含め、他社も大手企業がパブリッククラウドを安全に使えると断言できるだけの製品やサービスは持っていないのではないか。いずれ出てくるだろうが、まだ時間はかかる。

 これは興味深いことなのだが、自分の職務歴を振り返ってみるとセキュリティの問題こそ企業が新しいものに着手することに対する障害になっていた。われわれの技術が出てくる以前は、企業はインターネットについてメール、ウェブブラウジングの使用にとどまっており、その先の用途にインターネットを利用することに踏み切れなかった。セキュリティ面での懸念があったからだ。

 われわれの製品やサービスは、それまでは不可能だったことを可能にすることができた。パブリッククラウドでもわれわれに、これと同様の機会が与えられるかもしれない。パブリッククラウドでも安全性を確保できる仕組みを用意することができれば、大きな事業機会になる。

--攻撃者は常に防御の裏をかいてくる。この繰り返しは止まらないのか。

 攻撃者と防御側の戦いは一層激しくなっている。まさにイタチごっこだ。しかし、クラウドベースでセキュリティ機能を整えることで、かなり有効な対処ができると考えている。クラウドにセキュリティを担う機構を組み込めば、更新の頻度や速度をより高くし、新たな攻撃、変化に対し素早い対応ができる。

 われわれもセキュリティのエンジニアも多数の攻撃に対し、うまく検知して被害を防止できる多くのアイデアを持っている。ただ、現実には有効なブロック策を実装するにしても、市場投入するにも長い時間がかかる。通常だと製品の試験が必要であり、検証して製品を送って、アップグレードしてという工程は6カ月かそれ以上は要する。だが、クラウドベースであれば、ソフトは瞬時に更新できるなど利点が多い。

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