続いてのパネルディスカッションでは、モデレーターを務めた蟹瀬誠一氏が、継続性の観点から「日本には、創業200年以上の企業が3000社ある。世界中で見ても断トツに長寿企業が多い。それは、変化への対応に敏感であること、強い団結力があること、現場の声をよく聞いていること、無理のない資金調達をしているという共通要素がある」とし、「今日はチャンスとリスクという点を踏まえながら、Sustainable Growthということについて考えていきたい」と切り出した。
モデレーターを務めた蟹瀬誠一氏
パネリストとして登壇した中国経済連合会の山下隆会長は、「安倍政権によって打ち出された成長戦略は、実行に移されなくては意味がない。そのなかで重要なのは、地方の活性化である」としたほか、「地方の強みや、地方で起こせるイノベーションといったものを活用し、地域が発展できるようにしたい。中国地域には、モノづくりの強みがある。また、まだ強みになり得ていないが観光という資源もある。こうしたものをもっと活用していく必要がある」と、中国地域におけるチャンスについて言及。
中国経済連合会 山下隆会長
また、「中国地域は、1995年から人口が減っており、日本のなかでの少子高齢化の先進国だといえる」と指摘。少子高齢化への取り組みで先行的に対策を打ち出す必要性にも言及した。
さらに、自らが会長を務める中国電力では、「知財の活用に取り組んでいる。これは10年前から進めているが、エネルギー業界における当社の知財の評価は高い。特に、スマートグリッドについては特許で固めており、これをいかに活用していくかが大事である。石炭、火力は世界でみればまだ50%を占める。中国電力には、これを効率的する技術があり、海外展開に生かせる」としたのに加え、「電力システム改革や電力全面自由化はリスクとも言えるが、見方を変えればチャンスにもなる。安定的で、信頼性の高い電力を供給できることが、会社全体の信頼感につながる」などとした。
また、「経営者が技術を理解できないと適切な手が打てない。経営者は技術革新の新たな風に当たる必要がある」とも指摘した。
生産台数の大幅増を見込むマツダ
一方、マツダ 代表取締役副会長の金井誠太氏は、「マツダは年間120万台の世界販売を、2016年3月期までには170万台にまで拡大する計画だ。その増加分は、すべて海外工場を拡張することで増やす。日本での生産台数を減らすことはない」とし、「海外の生産拠点では、同じオペレーション品質が確保できるのかといった課題のほか、災害時のリスクマネジメント、知財などの漏えいや侵害のリスク、各国の自動車政策やエネルギー政策がどうなるのかといった見極めが大切である」と、グローバル展開におけるリスク要素について言及。
マツダ 代表取締役副会長 金井誠太氏
さらに、「マツダは1社で、世界中のすべての市場、すべての技術をカバーできるとは思ってない。地域(市場)、商品、技術という観点で、相互にうまく補完できるところはアライアンスを組んでいくことになる」とし、グローバルなアライアンス関係について触れる一方で、「競争しなければならない領域では、自前主義は大事にしていく必要がある」と語った。
「自動車産業の最大のリスクは、作った製品が売れないということ。これは、製品の競争力だけでなく、為替の影響や世界の経済環境にも影響を受けるものである」としながら、「ただ、自分たちでコントロールできるのは、製品の競争力である。自分の会社でしか提供できない価値を、しっかりと提供し続けるしかないだろう。他社と同じことをやっていれば安心であるとか、失敗を恐れて挑戦をせずに尻込みするといった企業風土こそが一番のリスクである。日本の失われた20年の原因は、こうした心の隙か、もしくは風土のようなものがある」と指摘し、「マツダは、改めて挑戦をし続けていきたいと考えている」と決意を述べた。