本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズの木下剛 専務執行役員と、NECの保坂岳深 執行役員の発言を紹介する。
「ACI構想でオープン化ニーズの原点に立ち返ったICTの在り方を示した」(シスコシステムズ 木下剛 専務執行役員)
シスコシステムズ 木下剛 専務執行役員
シスコシステムズが先ごろ、エンタープライズ向けネットワーク機器の新製品群を発表した。同社でテクノロジーソリューション&アーキテクチャとともにエンタープライズネットワーク事業を統括する木下氏の冒頭の発言は、その発表会見で、米Cisco Systemsが11月上旬に発表した新構想「Application Centric Infrastructure(ACI)」について述べたものである。
今回発表された新製品群もこの新構想を実現する要素となる。新製品群の内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは米国での発表会見で最高経営責任者(CEO)のJohn Chambers氏が自ら力を込めて説明したというACI構想に焦点を当てたい。
この構想については、日本法人でも今回の新製品発表のおよそ1週間前に、米国本社から幹部が来日して記者説明会が行われた。それによると、ACIは物理と仮想両方のネットワーク上のICTリソースを可視化し、アプリケーションからポリシーベースでそれらを統合管理できるようにする技術に基づいた、データセンター向けのソリューションコンセプトだ。
説明に立った幹部はさらに、「ACIはSoftware-Defined Networking(SDN)の概念を進化させたものだ」とも語っていた。すなわち、シスコは今後、ネットワーク領域にとどまらず、データセンター全体の制御を行うSoftware-Defined Data Center(SDDC)の領域をもカバーしていく構えのようだ。
ACIはつまりSDDCのことなのか――そう考えながら今回の新製品発表会見に出席したところ、木下氏からACIの狙いについて本質的なポイントを聞くことができた。それが冒頭の言葉である。
同氏によると、ACIの発想は、ICTにおける真のオープン化ニーズとは何か、が原点だという。「これまでベンダー側はともすれば、ツールを中心としたリソースのオープン化ばかりに目が行きがちだった。しかし、ユーザーが求めるオープン化ニーズは、ICTのツールにとらわれることなく、アプリケーションをいかに自在に開発し利用できるかにある。そのユーザーニーズに対応したICT環境を提供していこうというのがACIの根本的な考え方だ」
ACIはその言葉通り、アプリケーション主導のインフラを意味する。アプリケーション主導とはすなわち、ビジネス主導ということだ。となると、ACI構想の推進によってシスコは何を目指しているのか。