IT専門の調査会社、Forrester Researchは、国内IT市場に関する2014年の予測を発表した。IT投資額は対前年比2%成長にとどまり、緩やかな伸びになるとしている。
2013年の企業と公共部門のIT投資額は、「アベノミクス効果」に支えられて対前年比3.7%の伸びとなったが、2014年4月からの消費税引き上げが影響し、2014年の伸びは対前年比2%程度となると予測している。IT投資に寄与するのは、金融、公共、製造におけるシステム刷新プロジェクトが主となる見込みだという。
また同社では、日本のIT市場は米国に次ぐ世界第2位の規模を維持しており、急速に成長するアジア全体のIT投資の4割を占める巨大市場とする一方で、日本企業はIT予算や人員の7割~8割を既存の基幹系インフラやアプリケーションの保守運用に費やす構造から脱せずにいる現実があると指摘。この構造を打破するために、テクノロジを駆使した破壊的なイノベーションを積極的に取り込んでいく必要があるとしている。
さらに、日本国内IT市場の主な傾向として、以下のような項目を挙げている。
カスタマーエンゲージメントがモバイル、ビッグデータ、アナリティックス投資を促進する
消費者がモバイルやSNSにより長い時間を費やすようになり、より優れた顧客体験を提供するために、金融、小売り、サービス業などの先進企業では、モバイル戦略やオムニチャネル戦略を描き、データ分析への投資を増やしている。いかに簡単かつタイムリーに顧客情報にアクセスし、データに基づいた正しい経営判断ができるかが、分析システムを導入するプロジェクトを成功させるための鍵になるという。
パブリッククラウドの利用が急進するが、古い商慣習が壁となる
情報系SaaSアプリケーション、開発・テスト、期間限定イベントの管理、データ保存、バックアップ、アーカイブといった特定の用途で、日本国内でもパブリッククラウドの利用事例が増えている。一方で、日本企業は既存の業務に合わせてカスタム開発したオンプレミス型のシステムや、過度にカスタム機能をアドオンしたパッケージ型システムの導入に偏重しているとも述べている。
ガバナンスおよびセキュリティ対策の集中管理が急務となる
ITセキュリティを全社横断的に統一して管理する組織がないと、クラウドやモバイルなど新しい技術を導入する際に、判断ができず、消極的になりがちだという。一方で、従業員が所属する組織内で正式に許可されていない私物端末やアプリケーションを無断で業務に使用する「シャドーIT」はリスクを助長する面があるとのこと。従業員の自発的な努力で阻止しようとするのではなく、企業が組織内でガバナンスやセキュリティ方針をきちんと管理・運用していくべきと指摘した。