世界中のモノがインターネットにつながり、有機的な連携が進めば、ネットワークによる新しい未来像が見えてくると言われる。シスコシステムズでは「モノのインターネット(Internet of Things:IoT)」をさらに一歩進め、「Internet of Everything(IoE)」構想を掲げた。新たな巨大市場で先行する考えだ。代表執行役員社長を務める平井康文氏にその戦略を聞いた。
IoEは第3の戦略モデル
--シスコの考えるIoEはどのようなものですか。
シスコシステムズの社長を務める平井康文氏
ICTの進化の流れという観点からすると、3つの潮流がある。まず「ITのコンシューマライゼーション」だ。BYOD、スマートフォン、タブレットなどの発展により、企業の生産性が向上する。2つ目は、クラウドにより企業が無限の柔軟性、データ容量を持ったこと。3つ目がIoEだ。コンシューマー化で生産性が向上し、クラウドは経営効率を改善したが、IoEはまったく新しい戦略モデルだと位置づけられる。
--IoTとIoEの違いは何ですか。
IoTは、M2M(Machine to Machine)を中心に、モノがインターネットにすでにつながっている。IoEは人、ビジネスプロセス、データまでを組み合わせて利用できるのだから、接続されるのがThingではなくてEverythingとなる。M2Mにとどまることなく、まったく新しい価値を創造できる。
地域社会、政府、医療、教育、働き方のみならず、生活様式の質が変化している。BYODの動き、スマートフォン、タブレットなどの進化でパソコンから脱却した仕事の形ができてきた。いわゆる9時から5時まで、かつ監督者が目の前にいて仕事をするというやり方ではなく、地球時間に合わせた働き方が、そこにある。
ビデオの技術が大きく進展したことで、コミュニケーションの可視化が進んだ。ワークスタイルの革新は、ビデオ技術が1つの推進力になっている。在宅勤務、テレワークなどは、企業のパソコンを従業員の自宅、あるいは遠隔地に置いて、電話、メール、音声中心だったものが、ビデオで実際に対面している状態を疑似的に作り出せるようになった。
--IoEを進める上でどこが競合となりますか。
IoEというのは1社独占というような形で実現できるものではない。当然、パートナーシップとエコシステムが重要になる。例えば、IoEと密接な関連を持つ要素であるビッグデータを考えると、この先オープンデータが中心になるが、ビッグデータの入り口として、情報をキャプチャをするものとしてOracleやMicrsoftはデータベースを持っている。彼らとわれわれは競合するのではなく、補完的な関係となる。IoEは、業界を挙げて土台を構築すべき時期であると考えている。