製造から医療や教育まで及ぶIoEの可能性
--IoEは産業にどのような影響を及ぼすでしょうか。
国内でIoEの恩恵を最も享受できるのは製造業だろう。IoE活用の切り口として、記録、追跡、監視などの機能があるが、これらは工場の生産ラインに好適だ。今後は、人とITが一体化し、これまでにはなかった新しい動きが出てくる。
センサの技術により、予見への取り組みが進化し、そこからの知見はビッグデータとして蓄積される。IoEは工場で特に大きなメリットがある。
小売り、さらに医療も大いに期待できる分野だ。医療では法規制が障壁になるかもしれないが、市場規模としては大きい。現時点では電子カルテなどの実績はあるが、全体として遅れている。欧米では遠隔医療が進んできているのだが、日本では依然として健康相談程度にとどまっている。東日本大震災で大きな問題となったことだが、病院が津波などで壊れ、カルテがすべて失われ、病院に通っていた人々は避難先で、どんな薬を処方されていたのか、明確には分からない例が続出した。だが、IoEの世界ではデータを集約することができこのような課題も解決できる。
--教育の領域をIoEはどう変えるでしょうか。
教育の分野でも大きな変革をもたらす。現在は基本的に教師は黒板を使い、生徒は教科書とノートを使っている。これらが電子化され、さらにインターネットでつながれば記憶することが中心の教育は、考えることを主軸とするものに変わっていくことができるだろう。
日本では依然として記憶重視の傾向があるが、イノベーションを起こすためには何かを覚えるより、情報からいかにしてインテリジェンスを創り出すか、という方向に変えていくべきだ。一方、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などでは無料のオンライン講座を開設しており、留学して経営学修士(MBA)を取得しなくても、教授の講義が受けられる。このような流れが強くなれば、大学の淘汰が始まるかもしれない。