モノのインターネットの衝撃

新ビジネスの可能性秘める「モノのインターネット」の未来

田中好伸 (編集部)

2014-01-04 09:30

 冬の寒い夜。仕事を終え会社を出て帰宅。会社近くの駅の改札を通ると、自宅のエアコンに電源が入る。エアコンは、外気が前日の夜よりも5℃以上低いことをセンサで感知。過去の外気温のデータと電力消費量のデータを分析して、できるだけ人間が快適と思う気温に室内を調整しつつ、ムダな電力を抑える。自宅に入れば部屋で寒さに震えることもない。部屋が暖まりすぎることも電力を使いすぎることもない。過去に蓄積されたデータから、エアコンが最適な状態にしてくれるからだ――。

 モノのインターネット(Internet of Things:IoT)という技術が生活にもたらすメリットを分かりやすくすると、将来はこういったことが可能になるのかもしれない。

 現在のIoTを巡る議論は、どうしても将来の市場規模に目が行きがちだ。だが、重要なのは、IoTという技術がわれわれの社会生活にどんなメリットをもたらすことができるのか、ということだ。何らかのメリットがあるからこそ、社会生活に普及することで市場が形成されていくはずだからだ。


IoTは“モノゴトのインターネット”

 IoTは、あらゆるモノに通信端末が組み込まれ、モノ同士が連携するといわれるが、こう聞くと“M2M(Machine to Machine)”と何が違うのだろうかという疑問がわいてくる。M2Mのメリットといえば、建機大手のコマツが提供する「KOMTRAX」「KOMTRAX Plus」が分かりやすいだろう。

 KOMTRAXは、建設機械に取りつけられたセンサや全地球測位システム(GPS)の情報が通信端末から送信され、建設機械の状態や位置情報などを蓄積、販売代理店などが蓄積されたデータをもとにメンテナンスの期日管理、故障の予防保全などのサービスを提供する。KOMTRAX Plusは、鉱山で稼働する大型建設機械の情報を人工衛星経由でほぼリアルタイムで把握する。KOMTRAXは、ITが企業にとって新しい製品やサービスになり得るものとして注目を集めている。

 IoTとM2Mの関係について、ガートナー ジャパンのリサーチディレクターの池田武史氏は「IoTとM2Mは重なる部分があるが、M2Mだけではない」と解説する。池田氏は、IoTを説明するためにIoT以外のインターネットを挙げる。そのインターネットとは“情報のインターネット”“ヒトのインターネット”“場所のインターネット”の3つを挙げた。

 情報のインターネットとは、普段使っているメールに象徴される、情報を交換するためのインターネット。ヒトのインターネットは、ソーシャルネットワークが代表例であり、つまりヒトが介在するインターネットだ。そして、場所のインターネットは、GPSの情報が中心となっている。

 これらの先にあるのが、これらのインターネットが組み合わされるIoTだ。IoTはモノを中心にさまざまな情報が組み合わせられることが大きく異なる。このことから池田氏は「“モノのインターネット”よりも“モノゴトのインターネット”という言葉の方がIoTの世界を理解しやすい」と提案する(こうした意味からGartnerでは、IoTの代わりに“Internet of Everything(IoE)”という言葉を使うことがある)。

商品が「私を買って」と語りかける

 では、IoTではどのようなことが可能となるのだろうか? 池田氏は、洋服の小売り現場を例に解説した。IoTを活用した小売りの現場では、商品から「私を買って」と語りかけてくることもあり得るという。

 これは、例えば、これまでにどんな洋服を買ってきたかという情報が蓄積され、どういう洋服が好みなのかなどが分析されているためだ。そうした情報から、洋服の小売店にあるアクセサリのコーナーに立ち寄ると即座に、その買い物客が好きであろうアクセサリの情報が自動的に提示されるということが可能だ。

 「少し無気味な話で、ありがた迷惑な行為にもつながる。そうした不快さは“インテリジェンス”を付け加えることで和らげることができるのではないか」(池田氏)

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