4月からの消費税引き上げを前に、ネット通販業界が注目を集めている。国内と海外との業者の間でさらに課税に差が生じるからだ。この不公平は早くなくすべきだ。
国内の業者には死活問題
5%だった消費税が4月から8%に上がる。さらに2015年10月には10%になることが見込まれている。この消費税引き上げをめぐって、消費者向け電子商取引(EC)、すなわちネット通販業界に注目が集まっている。
現状でも国内に拠点を置く業者から電子書籍や音楽などのデジタルコンテンツをオンラインで購入すると消費税がかかる一方、海外拠点から配信する業者を通じて購入すると課税されない仕組みとなっているが、税率が引き上げられるとさらに差が出て、国内の業者には死活問題になりかねないからだ。
現行の法制度では、海外に本社を置き、海外に設置したサーバを経由して販売すれば、消費税はかからない。まさに法律の抜け道といえるが、これは何とも不公平である。すでにネット通販の事業拠点を海外に移す国内の業者も現れており、このままだと国内産業が空洞化する懸念も高まってきている。
こうした課税の不公平は以前から指摘されており、例えば欧州連合(EU)では、10年ほど前から海外企業によるネット通販への課税制度が適用されてきた。しかし、実効性に乏しいとの見方もあり、日本では適用が見送られてきた。
ここにきて注目度が高まってきたのは、4月からの消費税引き上げとともに、ネット経由でさまざまなコンテンツを購入できるクラウドサービスと、それを利用するスマートフォンやタブレット端末の普及が背景にある。
さらに、こうした課税の不公平は消費者向けサービスだけでなく、ネット広告や企業向けサービスにも広がっている。民間調査機関の推計によると、それらを含めた未回収の消費税は年間で250億円に上るという。もはや、手をこまねいているわけにはいかない状況になってきているのだ。
求められる迅速な制度改革と体制づくり
こうした不公平をなくそうと、財務省はこのほど制度改革の方針を決めた。その柱は、海外の業者に税当局への登録を求め、消費税の納税義務を課すというものだ。ただ、制度の詳細はこれから詰めるため、4月に消費税が8%に上がる段階での課税は見送り、2015年度からの適用を目指すとしている。
まずは、少しでも早く具体的な仕組みが整うことを求めたいところだが、その中で懸念されるのは、いくら義務を課してもグローバルなネットの取り引きは実態がつかみにくいことから、制度の網をすり抜ける業者が出てくるのではないかということだ。そうした業者が続出すると、せっかくの制度も形骸化してしまいかねない。
そうした事態を招くことなく徴税していくためには、税当局にも専門家を配置するなどの体制づくりが求められるだろう。さらに、サービスを提供する業者の国の税当局とも連携を図っていくべきだと考える。
ネット業界が動くスピードは速い。ネット通販における国内産業を空洞化させないためにも早急の対応を求めたい。
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