富士通研究所は3月12日、クラウドシステムの運用に関わるデータから運用管理に必要なフローを自動生成し、運用を支援する技術を開発したと発表した。今後、運用データの分析技術の研究開発を進め、2014年度中の実用化を目指すとしている。
今回開発した技術は、さまざまなシステムの運用手順書から共通化できる部分を抽出して標準的な運用手順を推定する運用手順書の分析技術と、運用手順を自動実行するフローの作成を効率化する自動化支援技術の2つ。
運用手順書分析・自動化支援技術
分析技術に関しては、運用管理者向けの運用手順書から作業を記述した部分を抽出し、できるだけ大きな単位、かつ再利用性が高くなるような部分に各手順書を分割、それを重ね合わせることにより、共通する運用手順を推定する。共通となる運用手順の複雑さと、含まれる運用作業により分類し、自動運用フローの作成の要する時間と現在の手作業時間を推定、自動化の優先度順を算出していく。
運用手順の共通部分を算出する際には、組み合わせ問題を解くことになり計算量が発散するが、本技術では段階的に部分列を求めることにより計算時間を短縮したという。その結果、人手では1カ月以上を要していた運用手順書の分析作業を数時間でできるようになった。
一方の自動化支援技術については、サービスの起動や停止など運用作業として最低限の要素を運用管理者が運用設計書に記述しておくことで、そこから自動運用フローを自動生成できるようにした。運用設計書には処理を実行する条件も指定可能だが、条件分岐などの実装も自動化しており、運用設計者のスキルは不要という。
運用手順書の分析で得られた共通手順に対応して運用設計書を記述することで、再利用性が高い自動運用フローの維持管理が容易になり、また自動生成により自動運用フローの作成時間を最大10分の1に短縮することが可能になった。
富士通研究所では、今回開発した技術を社内のデータセンターで使用している運用手順書に試験適用し、運用作業の約30%を自動化できることを確認した。近年、ストレージやネットワークの高度化に伴って各拠点に点在していた業務システムなどのクラウド化が進展し、システムログや構成情報、手順書などの運用データがクラウド上に蓄積されつつあるが、本技術を用いることでその再利用が可能となり、運用管理の効率化と高信頼化が期待されるとしている。