TechEdは、ITプロフェッショナルと開発者を対象としたMicrosoftのカンファレンスだ。しかし、Microsoftは米国時間5月12日午前に行ったTechEd North America 2014の開幕基調講演で、新しいオンプレミス製品を1つも発表しなかった。講演で話題にあがったのはクラウドだけだ。
Microsoft関係者は、ITマネージャーに気づかれないように、自社のオンプレミス型サーバ製品を徐々に廃止していきたいと考えているわけではない。むしろ同社が目指しているのは、オンプレミスアプリをクラウドで、そしてクラウドアプリをオンプレミスで利用できるようにする上での障壁を小さくすることだ。
クラウド&エンタープライズ部門のテクニカルフェローであるMark Russinovich氏は、「オンプレミスとクラウドの一貫性がテーマだ」と述べた。
Microsoft関係者はこの数年、新機能を最初にクラウドで提供するという同社の取り組みを強調してきた。それは新しいことではない。また、Microsoftが今後、オンプレミス専用製品の開発に投資することもない、とRussinovich氏は言う。
「しかし、オンプレミスとクラウドで、開発、導入、管理を一貫して行えるようにすることを目指している」(Russinovich氏)
実は、同氏がここで伝えようとしていることは、最近「ユニバーサルアプリ」を推進している「Windows」クライアントチームが支持する考えに非常によく似ている。開発者はWindowsと「Windows Phone」の両方で動作するアプリを開発する際にコードを100%再利用できるようになるわけではないが、Microsoftは一致しない部分を可能な限り減らそうとしている。Russinovich氏によれば、Microsoftの構想はオンプレミスとクラウドアプリに関してもほぼ同じだという。
「ユーザーがクラウドとオンプレミスの両方で最新のアプリを実行できるようにしたい。これからも異なる要素がすべてなくなることはないが、開発者には、クラウドとオンプレミスの中間にあるものを目標にしてほしいと伝えている」(Russinovich氏)
開発者とITプロフェッショナルがクラウドとオンプレミスの溝を埋めるのを支援するため、Microsoftは多くのオンプレミステクノロジをクラウドサービスに変換している。その一例が「Azure File」だ。
Azure Fileは「ファイル・シェアリング・アズ・ア・サービス」だ、とRussinovich氏がうまく表現した。Azure Fileは、現在オンプレミスで広く採用されているSMBプロトコルを使って、複数の仮想マシン(VM)からのファイル共有を可能にするサービスだ。Microsoftは5月12日にAzure Fileのパブリックプレビュー版を公開した。仮想マシンは標準のWindowsファイルAPIを使ってファイルシステムにアクセスできる。そのため、VMがこれらのファイルシステムに同時に接続しているとき、さまざまなロールやインスタンスをまたいで永続データを共有することができる。
このファイル共有機能を求める顧客は非常に多く、「Azure Web Sites」チームからも要望があったとRussinovich氏は言う。彼らはファイル共有を通してサーバ間でウェブサイトを配信できる機能を求めていた。Microsoftは、この新機能をサードパーティー開発者やITプロフェッショナルにも気に入ってもらえると期待している。