「4K/8Kテレビを成長の糧にしたい」--JEITA会長に富士通の山本正已社長

大河原克行

2014-05-31 08:00

 一般社団法人の電子情報技術産業協会(JEITA)は5月30日、新会長に山本正已氏(富士通 代表取締役社長)を選出。同日、会見を開いた。

 前会長の佐々木則夫氏(東芝 取締役副会長)の任期満了に伴って選出された。山本氏は「スマート社会の実現に向けた取り組み、政策提言、国際連携の取り組みを積極化したい」との方針を語った。

山本正已氏
JEITA 会長 山本正已氏(富士通 代表取締役社長)

 「IT・エレクトロニクス産業は、自動車産業と並んで雇用や経済を支える基幹産業のひとつ。電子工業の2013年下期の国内生産は5%増となるなど明るい兆しがみられている。今後の政府の成長戦略の実行で景気回復の広がりを大いに期待している。機器、デバイス、サービスがあらゆる分野のプラットフォームとなり、社会やビジネスのイノベーションを起こすこと、個人のライフスタイルを変革していくことを通じて、日本経済のさらなる活性化と、グローバル社会への貢献へとつなげていきたい」

 スマート社会の実現に向けた取り組みとしては、医療・ヘルスケア、エネルギー、社会インフラ、自動車、農業などの今後の成長分野で融合や連携を積極的に進めることで、革新的な製品やサービスを創出する考えを示した。

 特にヘルスケア分野では、4月にJEITAをはじめとする3団体でヘルスソフトウェア推進協議会の設立に向けた検討を開始したことに触れ、社会保障や医療、健康分野で効率化やサービス向上を図り、国民の健康長寿に貢献する活動を推進することを表明。オープンデータやビッグデータを活用が促進されることにあわせて、セキュリティ確保に向けた政府による新たなルール整備を要望する姿勢をみせた。

 同協会で実施しているグローバル動向調査の中に、2014年度からセンサを対象に加え、スマート社会の進展にあわせてタイムリーな市場動向の把握に努めるという。

 6月2日から開始される4Kテレビの試験放送にあわせて、4K/8Kの高精細テレビの普及促進、放送と通信の融合による新たなサービスやコンテンツの創出に向けて関係機関と連携する考えを示した。

 「4K/8Kを成長に向けた大きな糧にしたい。1964年の東京五輪が道路や鉄道などのインフラ整備が進んだように、2020年の東京五輪は4K/8Kやビッグデータなどのデジタルインフラの整備が進み、セキュリティの確保に向けて日本を世界にアピールする絶好の機会にしたい」

 政策提言に関しては「佐々木前会長体制で政府への精力的な働きかけた結果、2013年の税制改正大綱で設備投資促進税制や研究開発促進税制の拡充などが盛り込まれ、非常に大きな成果を得た。現在、法人税の引き下げについて議論されているが、国際水準である20%台への引き下げを要求している。研究開発税制の拡充、恒久化を強く要望していく」とした。安定的なエネルギー確保、医療・ヘルスケア、農業などの今後の成長分野での規制改革について、グローバルな競争力強化の観点から引き続き要望していく考えも示した。

 「日本における新たなイノベーションや付加価値を生みだし、国際社会でリーダーシップを取るためには、競争環境のイコールフッティングの確保が極めて重要である」

 国際連携への取り組みとしては「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は競争力強化のためにも早期の合意、妥協に向けて関係機関と緊密に連携するほか、日本とEU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)やWTO(世界貿易機関)のITA(情報技術協定)の拡大は交渉の早期妥結に向けて、業界が一丸となり活動する」と述べた。

 昨今の市場動向についても言及した。「この4~6月は消費増税前の駆け込み需要の反動減はあるが、想定の範囲内である。企業需要は堅調であり、7~9月以降の回復を期待している。2014年は電子工業の国内生産は対前年比3%増と4年ぶりの増加を見込んでいる。電子部品やディスプレイ、半導体が成長するとみている」としたほか、「PCは2013年度にWindows XPのサポート終了の影響もあり、この1~3月は前年同期比45%増以上、4月も58%増と大きな伸びが続いている。これがどこまで続くかわからないが上期中はこの勢いが続きそうだ」とした。

 「日系企業の国内生産比率は35%にとどまっており、生産の海外シフトが進んでいる。円安とはいえ、生産体制を国内に急に変えるのも難しい。日本の産業にとっては大きな問題だが、JEITA全体として方針を打ち出すよりも個々の企業ごとの戦略として議論していくものである」

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