「iOS」に存在する一部の診断機能がセキュリティホールになっているとする犯罪科学専門家からの指摘を受け、Appleがそれらの機能について詳しく説明した。
犯罪科学の専門家で著述家のJonathan Zdziarski氏は、米国時間7月18日に開催された「Hackers On Planet Earth(HOPE) X」カンファレンスで、米国家安全保障局(NSA)がiOSの特定の機能やサービスを利用し、iOS内に設けられているバックドア経由で、同局の調査対象となり得るユーザーに関するデータを収集している可能性を指摘した。これに対してAppleは21日に声明を発表し、診断目的で一部のデータにアクセスできる特定のサービスの存在を認めたものの、いかなる政府機関とも、意図的にiOSにバックドアを組み込むことで協力した事例はないと主張した。
Zdziarski氏は21日に投稿したブログ記事の中で、Appleがまがりなりにも認めたこれらのバックドアは、iOSで提供されているバックアップパスワードのセキュリティ機能をすり抜けることができるため、プライバシーを危険にさらすものだと指摘している。Zdziarski氏はまた、「これらのサービスが診断のためだけに設けられたものだという話を、私は一瞬たりとも信じたことはない」と述べ、これらのバックドアについて疑問を投げかけた。
Appleは、23日に修正した技術サポート文書の中で、問題となっている診断機能がiOS内でどのように、そしてなぜ使用されているかについての説明を試みている。
iOSでは、以下の診断機能を提供し、企業のIT部門や開発者、およびAppleCareが問題を解決できるよう支援している。
これらの診断機能を用いるには、ユーザーがデバイスのロックを解除し、他のコンピュータを信頼することに同意する必要がある。iOSデバイスと信頼されたコンピュータとの間でやりとりされるデータはすべて暗号化され、暗号鍵はAppleと共有されない。ユーザーが信頼されたコンピュータに関して「iTunes」のWi-Fi同期を有効にした場合は、これらのサービスに対してもそのコンピュータから無線でアクセスが行われる場合がある。
1. com.apple.mobile.pcapd
pcapdは、iOSデバイスから信頼されたコンピュータに送られる診断パケットのキャプチャをサポートする。これは、当該デバイス上のアプリに関する問題のトラブルシューティングと診断、および企業のVPN接続という目的で使用されている。詳細は、developer.apple.com/library/ios/qa/qa1176で確認のこと。
2. com.apple.mobile.file_relay
file_relayは、デバイスからの診断データの限定的なコピー実行をサポートする。このサービスは、ユーザーが作成したバックアップとは独立しており、デバイス上のすべてのデータにアクセスできるわけではなく、iOSのデータ保護機能に従う。アップルの技術スタッフは内部デバイスでfile_relayを使用し、顧客の設定に対する権限を取得する。AppleCareも、ユーザーの同意を得た上で、このツールを使用して関連する診断データをユーザーのデバイスから収集できる。
3. com.apple.mobile.house_arrest
house_arrestはiTunesによって使用され、この機能をサポートするアプリ用にiOSデバイスとの間でドキュメントをやりとりする。これはXcodeによっても使用され、アプリの開発中にテストデータをデバイスに送信できるようにする。
Appleはまた、iOSデバイスをコンピュータに接続したときに表示される「このコンピュータを信頼しますか」というおなじみの警告メッセージに関するサポートページと、iTunesとデータを同期したときに行われる動作を説明したサポートページを、この件に関する参照先として紹介している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。