先週、オラクルの「Oracle OpenWorld」カンファレンスがサンフランシスコで開催された。そこで明らかになった最も重要なことは、同社がサービスは多ければ多いほどいいという理論を中心に据えたアプローチによって、一番のクラウドベンダーになることを本気で目指していることだ。
もしあなたがOracleの顧客なら、考えるべき重要な問題は、量の多さは優れていることと同じと解釈していいのか、ということだ。選択肢は生まれる。その後、選択肢はあまりにも多くなりすぎる。なぜなら、テクノロジ企業は物語を構築し、それに調和しないものを切り捨てる訓練を受けていないし、それをできるだけの集中力も持ち合わせていないからだ。OracleがOpenWorldに関連して発行したプレスリリースの数は60近くに上った。
米ZDNetのRachel King記者はOpenWorldに関して多くの記事を書いたが、その1つで次のように書いている。
SaaSに関しては、Hurd氏はさらに豪語し、Oracleはどの企業よりも多くのSaaSアプリを提供しており、2014年だけで何十ものアプリが開発されたとした。数百種類以上に上るOracleのSaaSアプリポートフォリオには、それぞれ84種類以上のHCM製品とマーケティング製品、さらに113種類のサービスと69種類のセールスクラウドアプリが含まれる。
Hurd氏は、「われわれはクラウドに真剣に専念している。われわれが先程お話ししたことがその証拠になればいいのだが」と総括した。
たとえさまざまなクラウドアプリケーションが理論上、Oracleの「Alta」ユーザーインターフェースによって統合されるとしても、これほど多くのクラウドアプリケーションが存在することを「専念している」と呼べるのかどうか、筆者には分からない。
Oracleのクラウド戦略は筆者に、ジムにいる筋肉マニアのことを思い出させる。ベンチプレスできる重量や上腕二頭筋の大きさを自慢する割に、脚力が不十分で全身の体力のバランスがとれていないのだ。効率性とバランスが欠けている。一方、5分で100回のバーピーができる男になることを目指す方が、良い選択肢なのかもしれない。あなたはクラウドを革新するベンダーに対して、運動能力を高めた筋肉マニアになることと、バランスのとれたアスリートになることのどちらを望むだろうか。
簡単に言えば、大きいことは良いことだというOracleのクラウド戦略は、実のところ全体として見た場合の健全性と集中力の不足を露呈させてしまうかもしれない。Oracleは本当にあれほど多くのクラウドアプリケーションを提供しながら、俊敏性を維持することができるのだろうか。実際にあれほど多くのクラウド製品を管理できる企業など存在するのだろうか。
WorkdayやSalesforceなど、Oracleより効果的に対象を絞っている競合他社は物語を構築しており、忍び寄るクラウドアプリに対して全体的に抵抗している。WorkdayとSalesforceはOracleを俊敏性で上回る可能性が高い。Oracleは何百種類ものSaaSアプリについて革新のペースを維持しなければならなくなるからだ。
Oracleが同社の大規模なクラウドアプリケーション群から一定の売り上げを得ることは確かだろう。しかし、顧客は今でも、同社の戦略を簡単に説明するとどうなるのかを分からずにいるかもしれない。現在、Oracleのクラウド戦略は、肥大化して製品ラインアップを拡充し、もちろん顧客にサービスを販売することのようだ。クラウド製品が並んだ分厚いメニューが、顧客そしてOracle自体にとっても良いことなのかどうかは、後になってみないと分からない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。