中国、米国企業の例――メイバンク担当者も登壇
実際に、どんなトランスフォーメーションが起こっているのか。Ng氏は、典型的なケースとして、中国アリババグループのアリペイ(支付宝、Alipay)とWal-Mart Storesを挙げた。アリペイは、アリババに決済サービスを提供する企業だが、現在では、それにとどまらず、金融資産を使って、世界で22番目のマネーマーケットファンド(公社債投信)としても知られるようになった。金融機関として世界と競合するようになったわけだ。
また、Wal-Martは、徹底したテクノロジの活用で成長した小売業だが、今度は、インターネットという破壊的テクノロジを前にして、自らを変革させている。この3年間で15のテクノロジー企業を買収し、Amazon.comやアリババに対抗しようとしている。
新しいテクノロジを使った新しいサービスも次々生まれている。シンガポールの事例としては、ファストフードのマクドナルドが、スマートデバイスを持った子どもたちに店舗でゲームを配信したり、高級リゾートのバニヤンツリー(Banyan Tree Spa)がスマートデバイスと連動させて、個人の属性に応じたプロモーションやサービスを提供しているケースがあるという。
こうしたトランスフォーメーションを実現していく上で重要になってくるのが、ITインフラだ。ゲストスピーカーとして登壇した、メイバンクシンガポールのPatrick Yap氏は、インフラの重要性と、インフラの基盤として、NTTコミュニケーションズのデータセンターを選択した理由を解説した。
メイバンクシンガポール
Patrick Yap氏
メイバンクは、マレーシアに本拠を置くアジア有数の金融グループで、17カ国2200万人にサービスを提供している。メイバンクシンガポールは国内に22支店を持ち、5大金融グループの1つを構成しているという。
「競争が激しいマーケットで、サービス、信頼性、セキュリティなどについて、顧客の高い期待に応えなければならない。金融業におけるITは、ビジネスのコアを支えるシステムだ。ITインフラには、可用性、拡張性、強靭性などが求められている。そこでITインフラをアップグレードした」
具体的には、2014年7月から新しいデータセンターで新しいシステムを稼働させたという。プロジェクトには、銀行側とベンダーあわせ312人が参加し、データセンターの要求基準は、Tier3レベル、99.98%のSLAだった。「これに応えてくれたのが、サービスブロバイダのディメンションデータとNTT Comunicationsのデータセンターだった。顧客に対してリアルタイムでオンデマンドなサービスを実現できた」と説明した。
Ng氏は、このほかにも、ペプシがイギリスにおいて展開しているマーケティング事例や、Tescoが韓国の地下鉄駅構内で行った仮想店舗の事例、赤ちゃんおむつにセンサをとりつけ、交換時期をスマートフォンに知らせるIoTの事例などを紹介した。
最後に「第3のプラットフォームでは、それぞれの技術の組み合わせることで、新しいサービスが生まれる。ビジネスのチャンスととらえてほしい」と訴えた。