まずMicrosoftは、「Microsoft Plus! for Windows 95」と呼ばれる「Windows 95」のアドオンプログラムで、IEを無料化した。次に、新OSのWindows 95にIEをバンドルし始めた。米ZDNetのMary Jo Foley記者が当時伝えているように、MicrosoftはPCベンダーに対し、Windows 95とIEをそのベンダーのPC全てにインストールするよう強制した。ほかのPC向けOSのベンダーをつぶすことを目指していたわけではない。当時、OSの競争はそれほど激しくなかった。目標としていたのはNetscapeをつぶすことであり、同時にIEに関するSpyglassへの支払いを回避することだった。
コンピュータの歴史の中ではあまり知られていないことだが、Spyglassは愚かにも、IEの販売数に応じて収入を得る契約を結んでいた。Microsoftは、IEは無料であり、OSの一部であるから、Spyglassへの支払い義務はないと主張した。
NetscapeとSpyglassはどちらもMicrosoftを訴えて、両方とも勝訴した。しかし、いずれの勝利にも意味はなかった。皮肉にもSpyglassの株主は、テクノロジの歴史の中で最も愚かしい取引の1つによって金持ちになった。同社には価値のあるものがほとんど残っていなかったにもかかわらず、OpenTVはどういうわけか、テレビのセットトップデバイスには大きな市場があると思い込んだ。2000年に、である。そしてOpenTVは、価値のない会社を25億ドルで買収した。読者がOpenTVの名前を聞いたことがない理由は、これで分かるだろう。
Netscapeはそれほど幸運ではなかった。
米司法省はNetscapeに対するMicrosoftの行為が独占禁止法に違反する疑いがあるとして、Microsoftを調査することにした。最終的にNetscapeは「勝利」したが、その時には遅すぎた。Microsoftの行為が違法な独占に当たる、という決定をThomas Penfield Jackson判事が下した後の1999年には、NetscapeはMicrosoftに完全に打ち負かされていた。IEはウェブブラウザを支配しており、Netscapeは徐々に歴史上のものとなりつつあった。
その後、Jackson判事の決定は骨抜きにされ、Microsoftは手ぬるい罰を受けるだけで難を逃れることになる。Netscapeはよろよろと歩き続けていたが、終わりは近づいていた。
Netscapeはそのコードをオープンソース化しようとした。Netscapeのコードから「Firefox」が生まれることになるが、それはNetscapeのビジネスの助けにはならなかった。初期のNetscapeの社員であるJamie Zawinski氏は2000年に、「死につつあるプロジェクトに『オープンソース』という妖精の魔法の粉を振りかけたところで、全てが魔法のようにうまくいくということはない」と語っている。
Netscapeは最終的にAOLに買収された。当時、人々はそれを大きな変化であり、Netscapeが勝利を収めるチャンスだと考えた。しかし、Netscapeは死のスパイラルに陥っていった。
2008年2月1日、AOLはNetscapeのサポートを中止した。
現在では、インターネットユーザーの大半はNetscapeについて聞いたことがない。それは残念なことだ。Netscapeは、そうした人々にウェブをもたらした、最も重要なただ1つのプログラムだったからだ。Netscape、君と出会えて良かった。今でも、君がいなくて寂しく思っている人たちがいる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。