サイバー攻撃のコストが下がり続けている
LINEで言えば、年端もいかぬ少年少女たちが「自動的に110番架電するのウイルス」を作成し流布するという、なかなかにセンセーショナルな話題を目にしました。これを目にしたとき、私は昔のとあるでき事を思い出しました。
今からおよそ20年ほど前になりますが、NTTドコモの携帯電話に搭載されていた「iモード」の中で、今のスマホのように通話以外の目的で携帯通信端末を利用する「はしり」的なサービスで利用できる機能の1つにメール機能があったのですが、その仕様を活用して“動くメール”を送ることが一部で流行した時期がありました。
その後このメールは公式に採用(?)されて、デコメールというサービスとなっていくのですが、当時は一部の人間が独自に楽しんでいました。いわゆるHTMLメールなのですが、当時からiモードのメールはこのHTMLメールで送られる仕様になっており、これを利用して「HTMLタグを本文に書く」ことで文字がスクロールしたり点滅したり、動的なメールとして友人のiモード端末に送信することができたのです。
最初のうちは、一部の人間が自分たちで楽しむためにこうしたメールをやり取りしていただけだったのですが、そうした流行が伝播していく中で「悪意のある人」というのは必ず現れるのが世の常です。この「タグ打ち」に無限ループなど無理のあるタグを記述して、ケータイをフリーズさせるといういたずらが流行しました。
特に処理性能の劣る端末ではかんたんに操作不能に陥れることが可能でしたので、強制的に電源を切るしか手段がないこの「いたずら」は、ちょっとした「憂さ晴らし」の道具として特にネットワークの広い子供たちの間に、瞬く間に広まっていきました。対象は同じ子供たちだけに留まらず、親や、不特定多数の端末にもおもしろ半分に送信する輩が出てくるようになっていきました。
先の少年少女たちの手によるLINEマルウェアは、アクセスした端末が勝手に110番通報するというものでした。動機も「びっくりさせようと思った」といったレベルだそうです。筆者が強く感じたのは、20年前も今も、似たような動機で似たような事をするものだな、という点と、そして昔も今も変わらず、マルウェアの作成はとても簡単であるという点です。