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ものづくり企業としてのプライド--グリー藤本CTO - (page 3)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2014-12-25 10:51

--今後5年で、技術はどのように進化していくと思うか。

 インターネットまわりの技術がどうなるか、これまでの10年を振り返ってみると、技術的に非線形な、わけのわからない進化はしていません。たとえばネットワークの接続性では、より長い時間、より速く、どこでも使えるようになりました。これは想定内のことであり、正当な進化といえます。また、単純にコンピューティングリソースも増えていますが、全く新しい、たとえば量子コンピューティングは実用化されていません。

 ただ、処理の精度はここ5年くらいにブレイクスルーがあるかもしれません。言い換えれば、どれだけ人間に近いことができるようになるかという話ですね。最近は脳の仕組みを参考にした“ディープニューラルネットワーク”を使用する機械学習「深層学習(ディープラーニング)」の話が盛り上がっていますが、想像を超えた領域に行く可能性があると思っています。このレイヤは、機械の情報処理精度という意味では予測が付かないかもしれません。


 グリーが5年後の世界でどうありたいか。もちろん、ネット関連企業であり続けるというのが大前提ですが。進化は技術の要素で、その上に何を載せるのかは人間の想像力次第です。CTOとしては、まず第一にネットのデバイスや接続性に対して、モノを作る側としてその技術に応えられるようなレベルのモノを作れるようになっていたいです。技術的な進化を最大限活用できる開発チームでありたいですし、なっていないといけないと思います。

--技術が非線形な成長を遂げることで起きることとは。

 基本的に機械が人間に似せた何かふるまいをしようと思ったときに、そのプロセスは「クラスタリング」「コグニション(認知)」「アクション」「フィードバック」の4つがあります。クラスタリングは写真の(画像検索などに使われる)オブジェクト抽出がわかりやすいですね。認知は抽出したオブジェクトが何かを判別すること。これは単体で見るのもありますし、コンテキストをひも付ける場合もあって、結構難しい。この2つが高精度になる可能性があると考えています。

 わかりやすい例では、Googleのシステムに直接さまざまな画像を認識させてキャプションを生成できる「イメージキャプション生成」があります。それが5年経つとすごく精度が上がるというのは普通にあり得る話です。画像でも、同じことをテキストでもできるようになります、音声もそうですし、極端な話、センサの問題もありますが嗅覚でも可能です。技術がそこまで進化したときに、今まったく開発できていないのは、コンピュータが認知したときにどう行動するかという「アクション」です。

 認知と精度の向上と、アクションの正確性は相関が強いので、コンピュータの自律性がすごく上がっていきます。認知の精度が上がるということはアクションの幅も広がります。その結果何がフィードバックとして起きるか。ソフトウェアだけならいいですが、ハードウェアがからむと(自律性の高いハードウェアが存在する世界では)何が起きるか分からないのでちょっと怖い。その時開発者に求められるのは倫理や哲学の領域でしょうか。5年でそこまでになる可能性は低いと思いますが、これはもうSFの世界です。それが現実に近づいているのかもしれないですね。

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