日立、セキュリティリスク評価技術を開発--脆弱性の危険性を自動で算出

NO BUDGET

2015-03-02 18:12

 日立製作所は2月26日、セキュリティリスク評価技術を開発したと発表した。ソフトウェアの脆弱性に対する攻撃リスクを自動的に算出し、対策優先度を提示することで情報システム管理者による迅速な対処を支援するという。

 今回の技術で、サイバー攻撃の進入経路の推定や脆弱性対策の優先度付けなどの処理を自動化することで、高度な情報セキュリティスキルを持たないシステム管理者でも容易かつ迅速に対策できるようになるほか、脆弱性対策に関わるコスト低減を実現するという。

 典型的な3階層ウェブシステムの場合、2014年に公開された脆弱性情報を対象とした標準的な脆弱性特定方法と比較して対策すべき脆弱性の数を約3分の1まで絞り込めるとしている。今後は、セキュリティ運用の支援サービスとして、提供できるように開発を進めていく。

 脆弱性情報が公開された際、脆弱性の性質や保護対象となるシステムの構成などに基づき、サイバー攻撃の侵入経路を想定して、優先的に対処すべき脆弱性を特定する必要がある。このような対策には高度な情報セキュリティスキルが求められ、個々の組織でそのような専門家の確保や育成は困難と指摘されている。

 この対策として日立は今回、公開された脆弱性情報とソフトウェアやネットワーク構成などの保護対象とするシステム構成情報から、自動的にシステムの各機器が持つ脆弱性を特定した上で、そのシステムに想定される侵入経路を推定し、脆弱性対策の優先度を付ける技術を開発した。

 公開されている脆弱性情報には、脆弱性の内容とともに対象となるソフトウェアの識別子が記載されているが、ソフトウェア識別子は既存の構成管理ツールなどで機器から取得できるソフトウェア名称が一致しないこともあり、機器に内在する脆弱性を機械的に特定することが困難だった。

 今回、機器から取得したソフトウェア名称とソフトウェア識別子の類似度を算出することで、公開脆弱性情報と突き合わせできるようになり、脆弱性の有無を自動的に特定する技術を開発。大量に公開される脆弱性情報から大規模なシステムを構成する多数の機器に内在する脆弱性を迅速に特定できるという。

 組織を狙ったサイバー攻撃では、システムに内在する脆弱性を次々に狙うことで侵入範囲の拡大を図るため、通常なら外部から直接アクセスできない機器の脆弱性も一度システムに侵入されてしまうことで危険に晒されることがある。つまり、脆弱性がもたらすリスクは、その機器への侵入経路の有無やその経路の侵入確率で変動することになる。

 そこでシステムのネットワーク構成情報からサイバー攻撃の到達可能性を自動解析し、各システムで侵入可能な経路を網羅的に抽出する技術を開発。さまざまな原因と結果の関係性を記述したグラフから発生し得る現象を確率的に推論する“ベイジアンネットワーク”でこれらの侵入経路を解析可能な“有向非巡回グラフ”化する方式を考案した。

 有向非巡回グラフは、方向性のある矢印を用いてさまざまなモノの関係性を抽象化したグラフで、かつベイジアンネットワークを用いた確率推論で求められる関係性がループしない“非巡回”のグラフと説明する。

 この方式で各経路での侵入確率と各脆弱性の影響度を算出、機器ごとの脆弱性の有無だけでなく、各脆弱性のリスクを定量的に評価することで、脆弱性対策を的確かつ一律に優先度付けできるという。情報システムの管理者によるセキュリティリスク評価の容易化と脆弱性対策の迅速化を支援する。

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