アクセンチュアは金融機関向けに、デジタルテクノロジを含めて包括的にサービスを提供する組織「アクセンチュア ディストリビューション & マーケティングサービス」の展開を本格的にスタートすると発表した。
この組織では、金融機関の売上高を向上するための戦略立案やデジタル活用、テクノロジ導入、業務運用支援などを切り口にサービスを提供する。2014年12月にパイロットサービスを開始し、デジタルテクノロジを活用した異業種との協調を目指す金融機関のビジネスモデル検討を支援するなど、サービスの有効性を検証してきたという。

執行役員 金融サービス 統括部長 中野将志氏

アクセンチュア ディストリビューション & マーケティング サービス統括 マネジングディレクター 木原久明氏
アクセンチュアはサービス展開の背景として、日本の金融機関が1990年代後半から、グループ間での経営統合や資本規制などのコスト削減に取り組んできたが、2013年ごろからはグローバル化など、成長に関するものがテーマになってきていると説明した。
一方で90年代後半から2013年までの間に、スマートフォンの普及などに代表されるデジタル化が進展するとともに、小売業や通信業の金融業参入などにより、顧客の行動が複雑になりサービスへの欲求が高度化したため、既存のサービスからのパラダイムシフトが必要であると説明。金融機関のさらなる成長実現を支援するために「デジタル化」「業際横断(コンバージェンス)」「グローバル化」をキーワードとし、より包括的な製品やサービスを提供し、顧客のニーズに合わせたさまざまな協業形態を用意する必要あるとした。
具体的には「戦略コンサルティング、デジタルコンサルティング、システム開発・導入、アウトソーシングなど包括的視点でのサービス提供」「テクノロジを起点としたビジネスアイデアの創出と支援」「業際横断や海外への展開」などを挙げた。このほか、レガシーなシステムからの変革を助けるサービスも提供する。
組織を統括する木原久明氏は、金融機関に求められているのは、金融商品を販売するのではなく、顧客が求める体験の提供であると指摘。発想の転換が必要とした。例えば「金融サービスのニーズにワンストップで対応して手間を省く」「健康増進のアドバイスをして保険料を下げる」などの施策だ。そのためには、「新規テクノロジを起点にしてビジネス戦略を組み立てる」という考え方や「アジャイル型のプログラム開発」が必要になるとした。
これを実現するには、ビジネスとテクノロジの両方を理解し、顧客視点を理解する人材、システム部門とビジネス部門をつなぐ仕組みが必要だ。一方、金融機関のシステムはメインフレームを中心に構築されておりシステム部門は「止まらないシステム」の運用を課されてきた歴史がある。
執行役員で金融サービス本部統括本部長を務める中野将志氏は、金融機関のシステム部門がいきなり顧客視点を持ち、アジャイル型のプロジェクトの開発に取り組むのは難しいと指摘した。解決策として、戦略の立案といったコンサルティングサービスだけを提供するのではなく、アプリケーションの開発と一部運用などに関し、アクセンチュアが金融機関のシステム部門と一体となることで、顧客視点でアジャイルなプロジェクトの実現が可能になると説明していた。