バルセロナの礼拝堂で動く強力スパコン「MareNostrum」、その活躍と未来--ARMベース「Mont-Blanc」も - (page 3)

Anna Solana (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-05-15 06:30

未来への夢

 エクサフロップス(100京)マシンが2018年までに登場すると予想されているが、Valero氏は大きな期待はしていない。同氏は、「われわれには1億基のプロセッサが必要だ。これらのプロセッサには2つの問題がある。1つめはエネルギーコストで、これはどんなケースでも年間5億ユーロ程度の大きな金額になるだろう。2つめは、プロセッサの数が増えるにつれて『コンポーネントの故障率』が重大な問題になることだ」と話す。同氏は、「2022年と予想すべきだ」と述べたが、この問題については「専門家でない」ことも認めた。

 それでもValero氏は、未来はコグニティブコンピューティングにかかっていると予想し、モバイルテクノロジがエネルギーコストを上昇させずにスーパーコンピュータの能力を向上させることができると確信している。何と言っても、世界一高性能なスーパーコンピュータ天河2号は年間25メガワット分のコスト(約2500万ユーロ)がかかる。

モバイルの力

 そのためBSCは、スマートフォンでよく使用されるARMチップベースのスーパーコンピュータ「Mont-Blanc」の開発に既に着手している。MareNostrumが格納されている礼拝堂には、既にプロトタイプが置かれている。Valero氏は、Mont-Blancが「次に来るもの」だと述べた。これは大きな挑戦で、2016年に完成予定のバージョン2の予算は1130万ユーロだ(EUが800万ユーロを負担)。現在のところ、このプロトタイプではさまざまな利用法がテストされている。

提供:Anna Solana
Mont-Blancのプロトタイプ
提供:Anna Solana

 「今では、欧州で競争力のあるスーパーコンピュータを作ることが可能になった。テクノロジを利用することができ、環境も良好だからだ。われわれの夢は、スーパーコンピューティングの『Airbus』を作り出すことである」(Valero氏)

 しかし、短期的に見ると、次の論理的な段階はMareNostrumのアップデートだ。これはEUの「Partnership for Advanced Computing in Europe」(PRACE)プログラムの要件の1つで、PRACEでは、スーパーコンピューティング分野における欧州の競争力を維持するため、ドイツ、イタリア、フランス、スペインのスーパーコンピュータは、年1回の更新が義務づけられている。とはいえ、プロセッサの数を増やすといった継ぎ接ぎ的な解決策だけでは不十分だ。MareNostrumを全面的に改修する必要がある、とValero氏は明言した。

 これはMareNostrumのバージョン4になる。バージョン3のコストは、税金、電力や冷却などの関連経費を含めて2270万ユーロだった。2016年に完成予定のバージョン4のコストも同程度になる見通しだ。Valero氏によると、BSCにとって「唯一の優先事項」ではないとしても、同機関がLinpackベンチマークで再び上位に入る可能性もあるという。

 BSCが目指しているのは、「Top 500」リストの上位と、同センターが可能な限り多くのユーザーにサービスを提供することを可能にするアーキテクチャを実現することだ。その後、古くなったコンポーネントは、スペインの他のスーパーコンピューティングセンターで再利用される。「われわれはよきカタルーニャ人なので、何も捨てない」(Valero氏)

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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